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第4話
サムは上機嫌で小屋を後にした。
勿論車はインパラでは無く、予備の車だ。
町までは車で20分。
サムの短いドライブは快適に進んだ。
まずモーテルにチェックインする。
そして鍵を受け取り部屋のドアに鍵を差し込んだ時、それは起こった。
「何だよ…まだいたのかよ」
嫌味っぽいディーンの声がする。
サムの頭の中で。
「ディーン。
頼むから…少しで良い。
話し合いたい」
今度はカスティエルの声だ。
いつも通りの淡々とした声に悲壮感が混じっているのが分かる。
サムはそこでハタと気が付いた。
キャスの『お礼にディーンと仲直り出来るまでの経過を知らせる。』っていうのは、小屋から僕の脳内に生中継するってこと!?
やめてくれ~!!
じゃあなんの為に僕は小屋を出たんだ!?
頭の中でまたもや始まる痴話喧嘩な会話。
確かに、ディーンとキャスを二人きりにしてあげたいと思ったよ?
その方が話し合いが上手くいくと思って。
だけど…理由の半分…いや殆どはディーンとキャスの痴話喧嘩な会話からの仲直りなんて聞きたくも無いし、ましてや見たくも無かったからだ…!
それでもサムは何とか鍵を開け、部屋に入る。
そしてまずガースにメールをする。
脳内の声は精神的にシャットアウトして。
『ガース。
さっきはありがとう。
実はディーンと友人を二人きりにしてあげたくて。
でも僕が小屋を出る理由が無いから、君に頼んだんだ。
だからあと1時間くらいしたら、新米ハンターは具合が悪くなって今日は来ないってディーンにメールしといてくれる?
何度もごめんね!
よろしく!』
そしてサムがメールを送信して直ぐに着信音が鳴り『OK!』とガースから返信が着た。
ふう…こっちは上手くいった…だけどなあ…
サムは瓶ビールの蓋を開けると、ため息混じりに口を付けた。
その頃隠れ家の小屋では…。
飽きもせず痴話喧嘩な会話を不毛に続けるディーンとカスティエルがいた。
「だーかーらー!
しつこいっ!
お前と話す気はねえよ!」
「…ディーン…。
私が悪かったのなら謝りたいし、二度と失敗しない為にも何を怒っているのか聞かせて欲しい」
「い・や・だ。
それより俺のファンだっつー新米ハンターが訪ねて来るんだから消えろよ。
かわいい女の子だったりしてな~。
シャワー浴びといて良かった!」
「ディーン!」
カスティエルが怒鳴ると、ディーンがベッドに吹っ飛んだ。
ベッドに仰向けで寝転びディーンも負けじと怒鳴り返す。
「お前また天使のパワー使ったな!?
俺が怒ってるのはそういうとこなんだよ!」
「……天使のパワーを使ったこと…?
あのキスの最中の甘噛みを癒したことか?」
ディーンが柄にも無くボンッと赤くなる。
カスティエルがディーンに覆い被さる。
「ディーン!
どうして癒してはいけないんだ?
私は君が傷付くのは絶対に嫌だから……」
悲しげなカスティエルの青い瞳。
ディーンがぷいっと横を向く。
そしてボソボソと話し出す。
「…だから…あの時…すっげー気持ち良くて…キャスも気持ち良さそうで…この俺が…キスくらいでトロトロになるなんてって思ったけど…その…勃っちまってて…今日は抜くくらいはいいかな…と思ってたら…突然快感が消えた…」
カスティエルが目を見開く。
「…そうか…!
私がキスに夢中になり過ぎて君の舌を甘噛みしてしまったから、天使のパワーを使って舌を癒した。
その時、痛みと一緒に感情もリセットされてしまったんだ!」
ディーンは首まで真っ赤かになってボソボソと続ける。
「…甘噛みなんて知らねー…だけどお前は平気な顔でまたキスしようとしてきた…それでお前が何かしたんだと思った…自分の快感を高めるとか?そんなこと…自分勝手過ぎるだろ…」
「…ディーン…!」
カスティエルは胸が張り裂けそうだった。
ディーンへの愛のせいで。
カスティエルがディーンの真っ赤な耳朶にキスを落とす。
ディーンの身体がビクっと震える。
カスティエルが囁く。
「愛してるディーン。
私は甘噛みが愛情表現なんて知らなかった。
またディーンを『トロトロ』というのにしてみせる。
『抜くくらいはいい』は分からないが」
ディーンがクスリと笑って、ヘイゼルグリーンの瞳でカスティエルをチラリと横目で見る。
その美しさにカスティエルは見蕩れる。
カスティエルはディーンの顔を片手で正面に向けると、激しく唇を奪った。
サムはビールからウィスキーのストレートに酒を変えた。
何だこれ!?
これがコトが終わるまで続くなんて我慢出来るワケ無いだろ…。
キャス!聞こえる?
もう事情は分かったから脳内生中継を切ってくれ!
サムが懸命にカスティエルに語りかける。
カスティエルがディーンと仲直りが出来たことが嬉し過ぎて浮かれまくり、ディーンとのキスにまたまた夢中で、サムへの脳内生中継なんて全く忘れているということにも気付かずに。
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