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第2話

ディーンが初めてカスティエルとキスをしたのは1年前だ。 その日は休日で、丁度サムは私用で出掛けていて、ディーンとカスティエルは二人きりでディーンの部屋のベッドの上でヘッドホードにもたれ掛かり、パソコンでドラマを観ながらあーだこーだと文句を付けながら楽しんでいた。 すると突然カスティエルがディーンを押し倒し、触れるだけのキスをしたのだ。 その間、10秒。 ディーンは驚き過ぎて固まってしまい、カスティエルのキスを受け入れてしまった。 そしてカスティエルは消えた。 ディーンは最初は何が何だか分からなかったが、カスティエルは家族で大切な存在だし、嫌悪感も全くなかったので、軽く考えていた。 アイツもキスしたい時くらいあるよな~。 で、その時、たまたま傍に居たのが自分だった。 キャスもエロいドラマ観て勃ったこともあるしな~。 くらいに。 だからカスティエルからの連絡が1週間途絶えると、ディーンは自ら電話を掛けた。 もしかして出ないかもと思ったが、しつこくコール音を鳴らし続けていると、「…ディーン…」と小さな声がした。 「何で電話もメールも無視すんだよ? 心配すんだろ?」 『…君が怒っていると思ったら…出られなかった』 「怒る?何を?」 少しの沈黙の後、カスティエルは『強引にキスをしてしまったから』と打ちひしがれたように答えた。 ディーンが笑い飛ばす。 「キャス。そんなこと気にすんな。 俺はキャスにキスされても嫌じゃ無かった。 分かるよ。 お前だってキスしたい時くらい、あるよな。 でもお前はナンパ野郎じゃないし天使だから、そこらの女の子じゃ難しい。 たまたま俺が傍にいたから我慢出来なかったんだろ? いいか、良く聞け。 俺はお前以外の男がキスしてきたら、ボコボコにする。 でもキャスならいい」 「…ディーン!本当か?」 「ああ。だから元気出せ。 また遊びに来いよ。 この賢人の基地は、俺とサムとキャスの家族の家でもあるんだから」 次の瞬間キャスはディーンの前に現れ、ディーンはまたベッドに押し倒されキスされた。 今度は初めてよりちょっと激しいキス。 激しいと言っても唇を重ねているだけの。 それからもキャスは、ディーンが一人でいて尚且つリラックスしている時に限ってだがキスをして来た。 そして最初は唇を重ねるだけだったキャスのキスは、キスをする度テクニックが上達していった。 それでもディーンの考えは以前と変わらなかった。 プラス、自分やサムと一緒に過ごす時間が長くなるにつれ、キャスにも人間らしい感情がどんどん芽生えてんだな~くらいだ。 ただ、ディーンはカスティエルとキスをしていて初めて下半身が反応しそうになった時、カスティエルに訊いた。 「お前、本当にキスが好きだよな~。 何でそんなにしたがるんだよ?」 カスティエルの答えは簡潔だった。 一言「ディーンを愛しているから」と。 ディーンはそれで納得した。 いくら人間らしくなったとは言え、カスティエルは天使。 神の創造物の人間を愛している。 きっとその衝動に突き動かされて、キスという形を取って人類に対する愛情表現をしている、もしくはせずにいられないのだと。 そして数多の人類の中で、キスを出来る相手が自分しかいないんだと。 そしてカスティエルのキスはどんどん過激さを増し、ディーンは否が応でも下半身が反応する事を止められなくなった。 そしてある日、ディーンとカスティエルの喧嘩がきっかけになり(ディーンが一方的に拗ねていただけだが)、キスと仲直りの流れから、下半身が反応したディーンはまたまた軽い気持ちで抜きあいでもするかと、結果的にカスティエルを誘ってしまったのだ。 カスティエルは最初は『抜きあい』の意味すら知らなかったが、ディーンの真似をしながらのカスティエルの学習能力は凄まじかった。 天使のカスティエルにはディーンが快感を得ていると身体の縁が光って見えるらしく、カスティエルの愛撫はディーンがブラックアウトするまで続いた。 けれどディーンは怒らなかったし、二人は仲直り以上の事をした。 その時、犠牲になったのはサムだ。 ディーンとカスティエルを仲直りさせてやろうとして、カスティエルとディーンを隠れ家の山小屋に二人きりにさせた。 サムにはディーンとカスティエルの痴話喧嘩な会話を聞きたくないという本音もあった。 それでサムは町のモーテルで一晩を過ごす事にしたのだが、ディーンとカスティエルを仲直りさせたいという意味を少々履き違えたカスティエルに、ディーンとカスティエルの行為を脳内生中継されてしまったのだ。 カスティエルは行為の間はディーンに夢中でサムの呼び掛けには全く応じてくれなかったが、その後、脳内生中継を消してくれた。 そしてサムは、カスティエルがディーンを恋愛の対象として本気で愛していると得心がいった。 それでディーンに訊いてしまった。 カスティエルがディーンを愛していることを知っているのかと。 だがディーンは驚くことも無くあっさりと、カスティエルは天使だから人類を愛しているんだと笑って答えた。 あの時の脱力感をサムは忘れられない。 あのモーテルの部屋であてどもなく途方に暮れたことも。 それからもディーンとカスティエルの関係は続いている。 ただし『抜きあい』以上には進展していないが。 サムも薄々気付いているが、口を出す気は無いし、知りたくもない。 そして今、大掛かりな吸血鬼狩りは大成功に終わり、ディーンの部屋で行われていることを知る由もなく、サムは泥のように眠っていた。

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