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第2話

そうしてサムが翌朝の食事の後、ディーンにチャーリーからの電話の内容を説明すると、ディーンはあははと笑って「良いじゃねーか。チャーリーを慰めてやろうぜ」と言った。 カスティエルはサムの説明中は黙って聞いていたが、ディーンが笑って了承すると、ムスッとしながらサムに「チャーリーとは誰だ?」と訊いた。 それをディーンがウキウキと「お前も会ったことあるじゃん!傷を治してやっただろ?サムと俺の戦友!妹みたいなもん。赤毛の天真爛漫なかわいい女の子だよ」と答えてしまったせいで、カスティエルは「そうだった」と言うと、ぷいっと横を向いてしまった。 サムが慌ててスマホの画像をカスティエルに見せる。 そこにはディーンとサムとカスティエルとチャーリーが笑顔で映っている。 チャーリーが自撮りした物だ。 「ほら、皆で夕食食べて盛り上がったじゃないか!」 カスティエルはチラリと画像に目をやるとポツリと言った。 「……そう言えば…ちょっと変わっていたが、かわいらしい子だったな」 「そうそう! キャスも聞いたかもしれないけど、リヴァイアサンとの戦いの時、協力してくれて一緒に戦ったんだ! 腕を骨折までしてさ。 それにパソコンの天才! 本当に『戦友』で『妹』みたいな存在なんだ!」 『戦友』と『妹』を強調して捲し立てるサムをじっと見つめるカスティエル。 すると後ろからカスティエルの肩にディーンが顎をちょこんと乗せて、「お前知ってたか?チャーリーは男がダメでかわいい女の子にすぐ惚れるし惚れられるし、俺が横に居ても女の子はチャーリーに夢中になんだぜ?その上、男にも惚れられるしさ~。それに行動も突飛でさ。でも何か憎めないんだよなー。お前も会って好きになっただろ?」と楽しそうに言う。 するとカスティエルは「勿論だ」と答えると、パッと振り返りディーンの頬にキスをする。 「なんだよっ!?」 ディーンは真っ赤だ。 「君が肩に顎を乗せたから」 「俺のせいかよ!? サムの前で変なことすんな!」 「頬にキスするのが変なことなのか? 人間の挨拶でもある」 「う、うるさいっ! 兎に角、人前でベタベタすんな! あ、チャーリーの前でもキスなんかすんなよ!」 ディーンはそう言うと、早足に食堂から出て行く。 その後を「ディーン、何を怒っているんだ?」と言いながらカスティエルが追いかける。 一人食堂に残されたサムは、深いため息をついた後「痴話喧嘩はよそでやってくれ…」と独り言ちると、黙々と皿洗いに励むのだった。 チャーリーからのメールは、その日のうちにディーンとサムのスマホに同時に届いた。 チャーリーは二週間後のイベントの前日に、イベント会場に一番近いモーテルに泊まる予定で、もう予約も済ませたという。 ディーンが『チェックインしたらメールか電話くれ』と返信すると、『了解~!ディーンは相変わらずやさしいね。愛してる。』と返信が着た。 ディーンもお約束の『知ってる』と一言返していたら、ギラギラした視線を背後に感じて振り返ると、ディーンにピッタリくっつくようにカスティエルが立っていた。 「ビックリさせんなよ!近い!」 「……チャーリーは君を愛しているのか?」 「…は? あっ!お前、メール覗いたな!?」 「それに対して君は『知ってる』と答えた。 なぜだ? 私以外にも愛している者がいるということか?」 「ちがーう! チャーリーは『愛してる』と言われると『知ってる』って答えるのが定番なんだよ。 それを俺が真似してからかってるだけ! ほら離れ…んんっー!」 ディーンの唇は塞がれ、程なくカスティエルの舌が侵入してくる。 ディーンの口内を余すこと無く舌でなぞられ、熱くなった舌と舌が絡まると、ディーンは腰が砕けそうになる。 たかがキスくらいで何で俺が…!とディーンはカスティエルとキスをする度に思うが、カスティエルはディーンの感じるやり方と場所を、今迄の経験上完璧に把握し記憶しているので、ディーンは結局カスティエルに支えられて立っているのがやっとだ。 その内、カスティエルが焦らし出す。 さっきまでは痛いくらい絡められていた舌は解かれ、ただ掠められるだけだ。 そしてディーンからカスティエルの激しいキスを求めてしまう。 そうして口内を思う存分嬲られながら、服を脱がされる。 ようやくキスから解放された時には、ディーンは裸でベッドの上に転がっている。 はあはあと荒い息をしているディーンの唇から零れた、どちらのものとも知れない唾液を舐める取るカスティエルも裸だ。 カスティエルの猛った雄が、勃ち上がったディーン自身にグリグリと擦りつけられ、ディーンの口から「…ああっ…キャス…」と甘い吐息が漏れる。 「…ディーン…どうしたい?」 劣情に満ちたカスティエルの青い瞳。 ディーンは逆らえない。 「……だ、抱けよ…」 ディーンの小さな呟きに、カスティエルは「分かった」と言うと、ディーンの雄を掴み、ディーンの真っ白な首筋に吸い付いた。 そしてチャーリーが来るまでの二週間の間、小規模な狩りが一件あっただけで、ディーンとサムは比較的平和な日々を過ごしていた。 カスティエルも古い知り合いの天使から頼まれた野暮用クラスの仕事が二件あっただけだ。 ただ、ディーンは休んだ実感が無かった。 狩りが無い日やカスティエルの用事が無い日は、カスティエルと毎晩セックスをしていたからだ。 仕掛けて来るのは勿論カスティエルだが、カスティエルはディーンが疲れを翌日に持ち越さないように計算してセックスをしてくるので、ディーンは文句を言いつつもつい許してしまう。 それにカスティエルは、ディーンに何かを訊きたいのを我慢しているようなのだ。 ディーンにしてみれば自分から訊けばいいと思うが、カスティエルの言い出したくても言い出せない様子を見ていると、自分から聞き出すのは余りにもデリカシーが無いように思えてくるし、セックスで満たされれば話してくれるかも、という期待もあった。 そうしてチャーリーがイベント前日の、モーテルにチェックインする日がやって来た。 約束通り、チャーリーからディーンのスマホに電話がかかってくる。 だがそれはディーンとサムとカスティエルが想像していた電話とはかけ離れていた。 チャーリーは泣きながら叫んでいた。 「ディーン、助けて!」

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