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兄と幼馴染_捌
淡い桜色の光を放つ、その時が平八郎が特別な力を発揮している時。
人を殺めぬという空玄の言葉は晋の心の蔵を貫き、その命を奪わなかったことで実証された。
ただし幻妖によって体力を消耗し意識を失っているようだ。
「兄上は大丈夫なのか?」
はじめて人に刀を向けた。それが自分の身内だということに今更ながらに怖くて震えがくる。
「でぇ丈夫だろ。心の蔵はなんともねぇよ」
ほらよと襟をつかんで胸元を開いて見せる。貫いた筈の箇所は傷一つない。
「あぁ……」
良かったと胸をなでおろし座り込む平八郎に、
「ほら、身なりを整えておけよ。俺は晋さんを寝かせてくっからよ」
身なりと言われ、未だ肌蹴たままで下帯もない状態に顔を赤らめる。
「わかった。頼んだぞ」
「おう」
部屋を出ていく正吉を見送り身なりを整える。
晋に触れられて嫌悪感をもちながらも、性的興奮は収まらずに身体は高ぶっていた。
あの時、正吉が家へとこなければ晋の手でイかされていたことだろう。
血のつながりはなくとも平八郎にとっては兄だ。兄弟でまぐあうなんて、思いだすだけで怖て自分自身を強く抱きしめた。
しばらくして平八郎の元へ戻った正吉が、
「晋さん、顔色も良いからでぇ丈夫だろうよ」
と畳の上へ腰を下ろした。
「すまぬな、正吉」
「良いって。それよりも腕、すっかり痕になっちまったな」
今は平八郎の腰を縛る帯で両手を封じられていたために擦れて赤くなってしまった。
それを掴もうと正吉が手を伸ばすが、その痕を見せぬように背中の後ろへと隠してしまう。そうでもしないと正吉が気にしてしまうから。
「そのうち消えよう」
自分は気にしていないから正吉も気にするなと、そう笑みを浮かべて見せれば。
「隠すんじゃねぇ。二度とこんな目に合わせねぇ様に俺の目ぇに焼き付けておきてぇんだ」
だからと平八郎の腕を掴もうと手を伸ばす正吉のそれを避けようと身体をひねれば、均衡が崩れて畳の上へと押し倒されるかたちとなる。
互いに顔が近く、その状況に目を見開き正吉を見つめる。
「すまねぇ」
あわてて身を起こそうとするが、
「正吉」
それを引きとめたのは平八郎の手だ。
あの時感じた疼きと熱は一先ず収まったとそう思っていた。なのに今、正吉を近くに感じて再び体に火をつけたように身を熱くさせた。
「鎮めてくれるって言った、よな?」
そう口にすれば、今度は正吉が目を見開いて平八郎を見た。
「言ったよ。恐ぇ思いをしたのに、おめぇはでぇ丈夫なのかよ」
と聞かれ、平八郎は小さく頷いた。
「あぁ」
正吉になら何をされても怖くない。どうしてと聞かれたら答えに窮しそうだが、そう思うのだ。
「そうかい。で、おめぇは俺にどうしてほしいんでぃ?」
顔を近づけて覗きこむ正吉に、平八郎は顔を赤らめて俯きながら、
「ここに触れてはくれまいか」
と自分の下半身へと触れた。
ひゅっと息を吸い込む音、そして髪をかきむしる正吉の頬は真っ赤だ。
珍しいこともあったものだ。そんな顔をするなんて。
そんな正吉をみていたら、こちらまで顔が熱くなってきた。それを冷まそうと手で顔を仰ぐ。
「お主なぁ、照れるなら言わせるな」
「わりぃ。だってよ、予想外に可愛いことをするもんだからさ」
「なんだよ、それ」
唇をとがらせ、正吉のおでこに自分のおでこを当ててぐりぐりとこすり合わせる。平八郎にそうされると正吉は降参だと両手をあげるのだ。
「おめぇのそれは痛ぇんだよ」
この石頭とおでこを指で小突かれた。
「さてと、そろそろしようぜ、平八郎」
脱げよと、目を細めてにぃと口角をあげて正吉が笑う。その仕草に胸が高鳴りつつ平八郎は一糸まとわぬ姿となる。
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