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嫉心_陸

 そして、見舞いにきたと顔を見せれば、将吾が責めるように正吉を見る。 「俺じゃねぇよ。弥助だ」 「あ……、そうか、口止めをしておくべきだったな」  正吉と同じことを言う将吾に、単刀直入に聞く。 「青木殿か」 「そうだ。だから言いたくなかったのよ」  話せば誰にやられたかは直ぐにばれる。故に余計に心配をかけると思い、口止めを頼んだそうだ。 「当たり前だ。正純さんを見た時から、嫌な予感がしていたんだ」  将吾もいつかこうなるという予感があったのではないだろうか。だから平八郎の大したことない腕でも、頼りにしていると 言ったのだはないだろうか。 「まぁ、でもさ、正吉が治療してくれているから大丈夫だ」  それに俺は丈夫なんだと、からからと笑う。  身体も心も痛いのは将吾の方なのに、平八郎を励まそうとしてくれる。それが切なく、目頭が熱くなるが、泣くまいとグッ と涙をこらえる。 「そうだよな。正吉が治療しているなら大丈夫だな」 「そうでぇ、俺に任せとけ」  そう胸を叩き、平八郎の頭を撫でた。 「正吉」 「治してやっからよ」  と治療をするための準備を始めた。 「平八郎も手伝えよ」 「あぁ」  包帯を解くと痛々しい傷があらわれ、それを見た平八郎が驚いて口元を手で覆い隠す。 「切り傷、ここには痣が。なんて酷い真似を」 「まったくだぜ。おい、平八郎、ぬるま湯を貰ってきてくれ」  傷を見たまま動かない平八郎に、正吉が手を強く握りしめる。 「あ、まさきち」 「平八郎、ぬるま湯」 「あ、あぁ、わかった」  平八郎は桶を持つと部屋を出る。下働きの女にぬるま湯を作ってもらい部屋へと戻る。  正吉は将吾の傷口に陣中膏(ガマの油)を塗りつけているところだった。 「くっ」  我慢強い将吾ですら思わず声が出てしまうなんて、余程に痛いのだろう。平八郎が傷を負っている訳でもないのに痛そうな顔をしていた。 「平八郎、なんでおめぇが痛そうな顔してんだよ」  と正吉に言われ、 「だって、正吉よりも我慢強い将吾が唸るほどだぞ」  そう正直に答える。 「俺も我慢強ぇと思ってたんだがなぁ」  額を指で弾かれ、何をするんだとそこを押さえれば、ニヤリと笑う。 「まさか、俺に対して言っているのか」  何かと正吉や将吾に頼るから、それを言いたいのだろうか。 「それ以外になにがあるってぇンだ」  なぁ、と、将吾を顔を見合わせ、その通りだと笑う。 「ぬぬ、そんなことをいうヤツにはこうだ!」  ぬるま湯で手拭いを絞り、まだ浅く残る傷の上を乱暴に拭いた。 「いてぇ、平八郎、俺は怪我人だぞ」 「うるさい。仕返しは正吉にやれ」  自分では正吉に敵わないので将吾に任せ、平八郎は身体を拭きはじめた。

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