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父はドM野郎:3

 俺はパソコンに残された映像から父と母が日常的に家の中で変態的な行為をしていることを知った。  掲示板での話は妄想や噂ではなく現実だ。  誇張などされていない変態行為がまるで日記のように個人の秘密を凝縮した状態でパソコンの中にあった。  快楽の合間合間に吐き出される父の本音。それは、弱音だ。  地味な見た目の非力な妻に全面的に屈服している。  情けなさを受け入れて官能に溺れている異様な父の姿に俺の心はざわめいた。  知りたくなかった。見たくなかった。けれど、目が離せない。    鞭が空気を切る音に体が硬直するのに血が熱くたぎる。  生き生きとした母が画面の端々に写っているのが、嬉しくもあり悲しくもある。  もっと親孝行をしたかった。  父に似ずに母に似たら悲惨だなんて、友達から言われた軽口に言い返すこともなく同調した自分が恥ずかしい。  母が嫌いだったわけじゃない。  庇ったり、好きだなんて言えば、マザコンあつかいされて馬鹿にされる。  家族の味方にならないほうがよっぽど、甘ったれのガキだ。  思い返すと俺はありがとうの一つもまともに母に言えていない。    年相応に若々しい華やかな自慢の母だったならと最低なないものねだりをして、母を蔑ろにしていた。  けれど、母は何も悪くなかった。  地味で性の匂いを感じさせない女性が放つ罵倒と暴力と性的行動というギャップ。  派手な女王さまじゃない。  おおよそ、母の口から出てくるとは思えない単語の数々がすらすらと吐き出される違和感。  そこにはカタルシスがある。    大人しい女性にアナルを拡張させられる男という構図は映像としての力が強い。  汗か涙か分からないもので顔を汚す父は、元々の顔の作りがいいので、どこかで販売されていても違和感がない。  単純なプレイの記録ではなく見返して気持ちを高めるためのモノにしているのかもしれない。  母の真面目で妥協しない性格を思い出して、少し笑えた。  亡くなってもその人のすべて消えるわけじゃない。

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