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父はドM野郎:4

 二人は行為に俺があまり縁のない地下室と屋根裏部屋をよく使っていた。  立ち入りを禁じられていたわけじゃない。物置部屋だと思っていたので、気にしていなかった。  ときどき、母や父が片づけをしていることもある、その程度の感覚しか持っていない。  二人は日常的にハードのプレイをしているにもかかわらず、一緒に暮らしている俺には完全に隠していた。   子供のためというよりも父の快楽のためだろう。    映像の中には俺が母を呼ぶ声なんかも入っていた。  二人の姿がそろって俺の目に付くところになかったとしても、まさかこんなアブノーマルな性行為真っ最中だなんて思いもしない。自室での読書中とか、片付けで手が離せないとか、母の適当な言葉に俺はその都度、納得していた。    おやつは冷蔵庫だと俺に向かって叫びながら、父の尻を鞭で打っていたなんて想像できるはずがない。    こんなにも高い頻度で、当たり前の日常の一部として、父が母に責められてよだれを流した喜んでいたのなら、今の状況はかわいそうかもしれない。    映像の中で母は行為を食事に、快楽を栄養に例えていた。  栄養を得るために行為は必要だが、生きていくために必要な栄養を越えて行為をし続ければ破滅しかない。  カロリー過多で糖尿病になりたいのかデブと母が罵っていたことで、たとえ元の食事のコントロールは元より、快楽の制御も出来ていたのだろう。    仕事を頑張った自分へのご褒美にケーキ食べてる女だと言いながら母は父の乳首をつねり上げていた。  やっている行動がドン引きな性行為でも、気持ちとしてはどこか理解できる。  父にとって楽しみが被虐であっただけだ。ビールを飲んでこのために仕事を頑張ったという居酒屋にいるサラリーマンたちと何も変わらない。  父と母のことを気持ちが悪いだとか、頭がおかしいとは切り捨てられない。  家族が俺と父しか居ないからかもしれない。

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