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父はドM野郎:6

 俺は母の引き出しから屋根裏と地下室の鍵を持ち出し、部屋の中を確認する。  動画で見た内装とは少し違っていた。プレイ前に母がそれっぽく部屋を飾り付けるのかもしれない。すこしだけ埃っぽい。母が亡くなってから父は出入りしていないのだろう。    いくつかの道具を持ち出して俺は父のもとに向かった。  時間は深夜。何をしているかなど考えるまでもない。    父は母の名を呼びながらオナニーの最中だったが気にしない。ノックをすることなく扉を開けて床に座る父を見下ろす。  間抜けな顔で俺を見ながら父の性器は萎えていなかった。俺が声をかけると期待するように性器がヒクつく。真性のマゾだと思った。   「とりあえずさ、俺、まだ童貞なんだけど」  息を吐き出して、首をゆったりと動かす。  威圧感が出たなら正解だ。 「……おちつけ」 「実の父親で筆おろしとか引くっての」 「何を言っているんだ」    立ち上がった父は、涙をぬぐって真面目な父親の顔をしようとするので頬を軽く叩く。  ビックリして固まっている父の逆側の頬も叩く。  ワイシャツから見えるきちんと鍛えられている胸板を蹴れば簡単に父は仰向けになった。  性器を蹴ったら射精させてしまうかもしれないので上半身を狙ったが、なかなか難易度が高い。  俺は蹴った反動でよろめきながら咳払いする。  主導権を譲ってはならないので、意外と気を使うのかもしれない。    父は俺の内心に気づくこともなく怯えた顔をしていた。   「な、なにを」 「母さんが死んでから毎日毎日うるせーんだよ」    あえていつもはしない荒っぽい口調にする。  母がそうしていたからだ。  ガラの悪い口調で、凄むのではなく淡々とした声音。  無機質な棒読みっぽさがあるほうが、逆に本物臭くなる。  大げさにすると芝居のような馬鹿馬鹿しさが出るので、このぐらいがいいんだろう。   「驚いたりはいいからさっさと尻をこっちに向けろ」  おうかがいを立ててはいけない。  口を開く場合は命令であるべき。  俺が上で、父が下。  そういった立場の違いを明確にするのに言葉遣いや態度というのは大切なものだ。 「急に来て何を言っているんだ」 「めんどくせーな。息子に犯してもらうのをずっと待ってたんだろ、変態」    違うと言いながらも俺の股間を凝視する父。  物欲しそうな顔を隠せていない。   「高校生の息子のムスコが欲しいのかよ」    言葉のチョイスは大人たちが話していたものなので父に響くだろう。  俺からするとギャグに感じるが口を半開きにして身体を震わせる父の反応から間違っていなかったはずだ。    たとえば俺は見ないふりだって、できた。  父を放っておいて、勝手にそういった店に行けとか、同じ趣味の人間たちとよろしくやってろと、言えた。    俺は男を犯したいとか、父のケツに興味があるといった変態じゃない。  父を所有したいとか、母を羨ましいなんて思ってない。    だが、父は息子に犯される以上に興奮することなんかないだろう。そう思うと下半身に血が集まっていく。  母がいない今、俺以上のものは父にはない。そう思うと高揚感に体が支配される。父にとってこの世で一番必要なのは俺だ。

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