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第12話【ショタ(前編)昼過ぎ 中 *】
ワイシャツをはだけさせ、胸元を露出したショタは、マグロと共にトイレの個室へ入り、小さな体を何度も震わせる。
「あ……は、んっ」
マグロは、晒け出されたショタの胸元に顔を寄せ、舌を這わせた。そのまま、胸にある小さな突起の周りを、丹念に舐めだす。
胸元に舌を這わせるマグロに対し、ショタは何度も首を横に振る。
係長であるマグロに、当日の性処理依頼をして貰う……それが、ショタの頼んだことだ。
ショタとマグロは一日に決まって二回、賃金の発生しない、恋人としてのセックスをする。それは恋人として、二人が設けたルールだ。
処理課は、誰とでもセックスをするのが基本業務のようなもの。そんな中、お互いを恋人としてどう、周りと差別化するか……ショタとマグロが導き出した答えは、恋人としての時間を作ること。
けれど、それとは別に……ショタはほぼ毎日、マグロに自分自身への性処理を依頼させていた。
「やだ、やだぁ……それじゃ、なくて……っ」
ショタは小さく身じろぎながら、派手な髪色をしたマグロの頭を、掴む。
ショタが何をして欲しいのか、マグロは分かっていた。それでも、マグロは行動に移さないのだ。
音を出し、ショタの胸元に唇を寄せるマグロの頭を、ショタは押し返そうとする。
「マグロクン、や……愛撫は、いいからっ」
体を敏感にさせてから、ショタの性感帯である乳首を啄む。それが、マグロの愛撫であり前戯だということを、ショタは知っている。
それでもショタは、首を横に振って抵抗し続けた。
「ぁん……ん、マグロクン……時間、かけちゃ……やぁっ」
ショタは、心の底からマグロが好きだ。正直なところ、恋人としての触れ合いが一日二回のセックスだけ……それでは物足りないくらい、マグロを愛している。
依頼を抱えているマグロの時間を拘束したくない……でも、マグロと触れ合いたい。その打開策として、マグロに自分を売る。『もっとイチャイチャしたい』……そう言えたらいいのだが、ショタには言えなかった。
だからショタは、小遣い稼ぎという体でマグロに自分を売っている……そう、思われるように振る舞う。
依頼の時、マグロはただただ射精するだけのセックスをしてくれる。今日もそうだと、ショタは信じ込んでいた。
――しかし、マグロの様子がいつもと違うと、気付く。
頭を押し返されたマグロは、ジッとショタを見上げる。
(……え?)
マグロが自身に向ける眼差しは、いつだって優しいものだった。
――なのに、今のマグロは違う。
――マグロは、不服そうな瞳で、ショタを見上げていた。
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