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第15話【ショタ(後編)夕方 中】
ショタは上体を起こし、乱れた衣服を正すこともせず、ゴリに近寄る。
「マグロクンから、何か聴いたんですね?」
「いや、ショタ、違――」
「何が、どう、違うんですか?」
ニッコリと笑みを浮かべ、自分より断然背の高いゴリを、ショタは見上げる。
ゴリは気まずそうに視線を外し、しどろもどろになって言葉を探す。
「そ、そろそろ終業時間だなぁ」
「マグロクンと、何を話したんですか?」
「く……っ! お前さん、諦めが悪いぞ!」
「こっちも必死なんですよ」
ショタは、整えられたゴリのネクタイに手を伸ばし、引っ張る。そうすることで、ゴリの上体が傾いた。
「教えてください。マグロクン、何て言ってたんですか?」
大好きなマグロのことで、知らないことがあるだなんて、耐えられない。
ましてや、他の人が知っているのに自分が知らないだなんて……そんなこと、ショタが許容できるわけ、なかった。
いつもはニコニコと笑みを浮かべているショタの、真剣な眼差し……それでもゴリは、口を割らない。
「それは、お前さんがマグロに訊くべきことだろう?」
「でも――」
「それとも、案外マグロのことなんて……どうでもいい感じなのか?」
「ッ!」
その言葉は、つい先程ショタがゴリに掛けた言葉と、全く同じだった。
ショタは悔しげにネクタイから手を放し、俯く。
(マグロクン……)
ショタはゴリから離れて、衣服の乱れを正す。その間も、ショタはずっと……マグロのことを考えていた。
ゴリと別れ、時計の針が終業時間を指す少し前……ショタはフラフラと、会議室が並ぶ四階の通路を、意味も無く歩き続ける。その間……頭の中には、マグロのことしかなかった。
どんなに考えても、マグロが何を思ってあんなことをしたのか……ショタには、分からなかったのだ。
もう何周したか分からない通路を彷徨っていると、賑やかな声が聞こえてきた。
声の方へ視線を向けると……事務課の職員が数人、会議室から出てきている。
(……気分転換でもしよう)
ショタは何とか笑みを浮かべ、遅れて会議室を出てきた一人のリピーターに、声を掛けた。
「お疲れ様ですっ」
「うわっ! ビックリした~」
突然ショタに声を掛けられた職員は、肩を跳ねさせた後、振り返ってショタを見る。
ショタは職員の腕に、自身の腕を絡めた。
「良かったら、どうですか?」
男性職員の眼差しが、期待で揺れる。
上目遣いで、職員を見上げるショタは……リピーターであれば誰しも、胸をときめかせる程の可愛さと破壊力を持っていた。
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