15 / 29

第15話【ショタ(後編)夕方 中】

 ショタは上体を起こし、乱れた衣服を正すこともせず、ゴリに近寄る。 「マグロクンから、何か聴いたんですね?」 「いや、ショタ、違――」 「何が、どう、違うんですか?」  ニッコリと笑みを浮かべ、自分より断然背の高いゴリを、ショタは見上げる。  ゴリは気まずそうに視線を外し、しどろもどろになって言葉を探す。 「そ、そろそろ終業時間だなぁ」 「マグロクンと、何を話したんですか?」 「く……っ! お前さん、諦めが悪いぞ!」 「こっちも必死なんですよ」  ショタは、整えられたゴリのネクタイに手を伸ばし、引っ張る。そうすることで、ゴリの上体が傾いた。 「教えてください。マグロクン、何て言ってたんですか?」  大好きなマグロのことで、知らないことがあるだなんて、耐えられない。  ましてや、他の人が知っているのに自分が知らないだなんて……そんなこと、ショタが許容できるわけ、なかった。  いつもはニコニコと笑みを浮かべているショタの、真剣な眼差し……それでもゴリは、口を割らない。 「それは、お前さんがマグロに訊くべきことだろう?」 「でも――」 「それとも、案外マグロのことなんて……どうでもいい感じなのか?」 「ッ!」  その言葉は、つい先程ショタがゴリに掛けた言葉と、全く同じだった。  ショタは悔しげにネクタイから手を放し、俯く。 (マグロクン……)  ショタはゴリから離れて、衣服の乱れを正す。その間も、ショタはずっと……マグロのことを考えていた。  ゴリと別れ、時計の針が終業時間を指す少し前……ショタはフラフラと、会議室が並ぶ四階の通路を、意味も無く歩き続ける。その間……頭の中には、マグロのことしかなかった。  どんなに考えても、マグロが何を思ってあんなことをしたのか……ショタには、分からなかったのだ。  もう何周したか分からない通路を彷徨っていると、賑やかな声が聞こえてきた。  声の方へ視線を向けると……事務課の職員が数人、会議室から出てきている。 (……気分転換でもしよう)  ショタは何とか笑みを浮かべ、遅れて会議室を出てきた一人のリピーターに、声を掛けた。 「お疲れ様ですっ」 「うわっ! ビックリした~」  突然ショタに声を掛けられた職員は、肩を跳ねさせた後、振り返ってショタを見る。  ショタは職員の腕に、自身の腕を絡めた。 「良かったら、どうですか?」  男性職員の眼差しが、期待で揺れる。  上目遣いで、職員を見上げるショタは……リピーターであれば誰しも、胸をときめかせる程の可愛さと破壊力を持っていた。

ともだちにシェアしよう!