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第18話【BB(前編)正午 中】
マグロの言葉は……質問と言うよりは、相談のように感じられる。
BBはマグロを見上げたまま、投げ掛けられた質問へ、素直に返答した。
「したことあらへんけど……何か、あったん?」
BBとゴリは、依頼を通してセックスしたことがない。わざわざ依頼を通して繋がる必要性が、無いからだ。
BBの返事に、マグロは若干……眉を下げた。
マグロはそのまま自身の腕を掴み、俯きがちになって、呟く。
「……嫌、だなって」
「何が?」
「い、依頼を、通しての……セックス、が」
「それ、本人に言ったらあかんの?」
BBの疑問は、当然のものだろう。
マグロは小さく首を横に振り、またもやボソボソと呟いた。
「ショタの、考えは……分かっている、ので」
ショタが守銭奴なのを、BBも知っている。
ショタは小遣い稼ぎ感覚でマグロに依頼をさせ、マグロはそれに応じたい気持ちもあるけれど、業務的なセックスになるのが嫌だ……要約すると、そういうことなのだろう。
(悩み、ね……)
BBはふと、ゴリのことを思い出す。
最近のゴリは、何かに悩んでいる様子だった。詳しい内容までは知らないが、嘘を吐けないゴリを見れば、悩んでいるのは明白だ。
BBは、いつも真っ直ぐ前を向いているゴリを、好きになった。隣を歩く時も、道に迷った時でも『この人が近くに居たら、大丈夫』……そんな信頼を、BBはゴリに寄せている。
それでも……BBは『もっと自分を頼って欲しい』と、常日頃から思っていた。
悩みがあるなら、一番大切な人に相談すればいいのに、しない。今のマグロは、ゴリによく似ている。
――だからこそBBは、妙な苛立ちを覚えてしまう。
「僕……大事な人が悩みを抱えているんやったら、相談して欲しい性格なんよ」
「……?」
「分からへん? そやろね」
――これは、ただの八つ当たりだ。気付いてはいるけれど、止められない。
BBはマグロの腕を掴み、力任せに引く。
突然腕を引かれたマグロは、訳も分からずBBについて行くことしか、できなかった。
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