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第19話【BB(前編)正午 下 *】

 BBがマグロを引っ張ってやって来たのは、一階と二階を繋ぐ階段の、踊り場だ。  BBは壁に手を付け、自分を犯す後輩を振り返った。 「は、んっ! ふふっ、何やの、その顔……?」  ――BBを犯しているのは、マグロだ。  マグロは訳も分からず、BBに言われるがまま、BBを犯している。この行為に、何の意味があるのか分かっていないマグロは、眉間にシワを寄せてBBを見ていた。  八つ当たりの方法がセックスだなんて……自分の行動基準がセックスだということを痛感し、BBは思わず笑みを浮かべる。 「嫌やわぁ、あっ! んっ、僕は君の……憂さ晴らしに、付き合ってるんやで?」 「『憂さ晴らし』……です、か……?」 「せやで……んっ」  腰の動きは止めず、マグロがBBに訊き返す。BBはそんなマグロを見つめたまま、吐息交じりに答えた。 「傷付けたく、ないんやろっ? でも、納得できひん……んっ! せやから、こうして僕が――」 「それは、違います」  マグロは、ハッキリと口にする。  先程まで戸惑ったような表情を浮かべていたマグロは、真剣な眼差しでBBを見た。 「オレは……自分の悩みを打ち明けて、ショタに……嫌われたく、ない……っ」  マグロはそう言うと、BBの細い腰をしっかりと掴み直し、乱暴にペニスを突き穿つ。  その感覚に、堪らずBBは体を震わせた。 「何、それっ、んっ! そんなん――」 「ゴリ課長だって、同じだと……思い、ます」  予想外の人物に、BBは目を見開く。  ――マグロもまた、ゴリが何かに悩んでいるのを……知っていたのだ。 「嫌われるのが怖いから……幻滅されたくないから……オレ達は言えないんです……ッ」  マグロの腰遣いが、より一層激しいものとなる。  ――まるで、八つ当たりをされているかのような、腰遣いだ。 「あ、あっ! ん、やっ!」  何度も奥を突かれ、BBは断続的な悲鳴をあげる。  自分の意思とは裏腹に、BBのペニスは先走りの液を、踊り場に垂らす。そんな様子を眺めながら、BBはぼんやりと考えた。 (幻滅なんか、せぇへんのに……っ)  生理的な涙なのか、はたまた別の理由からの涙なのか……BBは、踊り場に涙を零す。  ――それでも、体は快楽に貪欲だった。  マグロのペニスはどんどん硬度を増し、それに呼応するように、BBのアナルがキツく締め付ける。 「あ、ぁんっ! まぐっ、ろちゃ、ひゃっ!」 「……ッ」  マグロは眉を寄せ、何も言わずにBBのアナルへ、自身のペニスを突き刺す。 「ひぁあっ! あぁっ!」  奥にマグロの熱を感じ、BBもつられて射精する。ドクドクと脈打つペニスに、BBは締め付けで応じた。  射精を終えたマグロのペニスが素早く引き抜かれると、BBは肩で息をしながら、その場に膝から崩れ落ちてしまう。  逃げるように階段を上がっていくマグロを、BBは追い掛けない。去って行くマグロを、ただただ……目で追い続けた。

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