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第24話【マグロ(前編)昼過ぎ 中 *】
だからと言って……ショタを傷付け、泣かせていい理由にはならない。
外回りをしていて、誰もいない三階の通路で蹲るマグロの前に、不意に影が差す。
「マグロ? お前さん、何やってるんだ?」
目の前に立っていたのは、ゴリだ。マグロは素早く顔を上げて、視線を泳がせる。
最近のゴリは、何かに悩んでいた。そんなゴリに、自分のせいでショタを傷付けてしまったと相談するのは、図々しいんじゃないか。マグロはそう考え、口を閉ざす。
落ち着きの無いマグロに視線を合わせるよう、ゴリがしゃがみ込んだ。
「俺はショタみたいに、お前さんの考えが読めないんだ。だから、口に出してくれると助かる」
そう言って、ゴリは笑った。
自分だって悩んでいるのに、それでも部下であるマグロを心配してくれる姿が……マグロの胸から、言葉を溢れさせる。
「ショタ、を……泣かせて、しまって……」
「マグロが? ショタを? 何で?」
「オレが、ハッキリ……言えないから……っ」
ショタのことが好きだから、業務として抱きたくない。たったそれだけの言葉が、上手く伝えられない……マグロはしどろもどろになって、ゴリに悩みを打ち明けた。
マグロの呟きに、ゴリは考えるような素振りをする。
マグロというニックネームの由来は、ネコの時……喘がず、何の反応も示さないから……マグロはふと、そんなことを思い出した。
自分の為に悩んでくれているゴリを見つめて、マグロは口を開く。
「か、課長……この後、予定は……?」
マグロの問いに、ゴリは小首を傾げながら答えた。
「四階で、二人分の依頼が入ってる……それが、どうかしたか?」
ゴリの答えに、マグロは視線を泳がせながら……ポツリと呟く。
「あ、の……お、お願いが……ッ」
そのお願いは、ゴリにとって予想外のものだった。
営業部の事務所がある三階の通路で、マグロはゴリの上に乗り、向かい合うようにして抱き付く。
「……っ」
ゴリの硬く、逞しいペニスをアナルで咥え込みながら、マグロは息を呑んだ。
ゴリはマグロの腰に手を添え、腑に落ちないといった表情を浮かべながら、マグロの体を揺する。
マグロからのお願いは【ゴリへの性処理依頼】だ。と言うのも、ただゴリとセックスをしたかったからではない。
セックスをして、気持ちいいと……マグロだって思う。ただそれを、声にも表情にも出せないだけ。
ゴリとのセックスで、自分が感じていることを口に出せたら……ショタにも気持ちを伝えられるんじゃないか……そういう算段だ。
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