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部屋に入るなり風見はすぐさま水嶋を抱き竦め、拒むまもなく執拗に唇を重ねてきた。
口付けなどという生易しいものではなく、情欲の激しさを感じさせるように噛り付いてくる。
水嶋が「待ってくれ」と言って風見の胸を押すも、一向に腕の力は緩まない。
風見の舌先が呼吸を奪うように、水嶋の口腔を掻き乱す。呼吸もままならず、水嶋は喘ぐようにして唾液を零した。足が震え、腰を支えられていなかったらへたり込んでいるはずだ。
「水嶋さんってこんな味がするんですね」
やっと唇を離した風見が呟く。赤い舌が舐め取るように唇を這う。
「どうでしたか、俺とのキスは。水嶋さん、いつも物欲しそうな目でみてましたもんね」
「み、見てなんかない」
震える声で否定するも、風見は唇を歪めた。
「俺はそういう目でいつも貴方を見ていましたよ。水嶋さんが口をつけた箸を使いたくて、あんなこと言いだすぐらいに」
水嶋は瞠目する。そんな下心丸出しの発言を風見が口にしたことにも驚くが、それ以上にそんな目的があったのかと愕然とした。
「あの時、凄く興奮したんですよ。この箸が水嶋さんの唇に触れたんだって思うと」
右手を掴まれ、掌に熱く硬い感触が押し付けられる。風見の欲望の証だと気づき、戸惑いと羞恥が湧き上がった。
「水嶋さんの手、綺麗ですよね。何度も想像したんです。この手で触られたら凄くいいんだろうなって」
耳元で囁かれ、形をなぞるように手が動かされていく。熱ぽい息遣いが耳に触れる。
「っ……水嶋さん」
名前を呼ばれ、体が熱く震える。既に下腹部の熱が鈍い痛みを孕んでいた。
「……中に上がろう」
微かに震える声で切り出す。心臓が痛いぐらいに高鳴っていた。
震える足取りで風見をベッドルームへと導く。
ベッドに倒れ込むなり、風見は唇を何度も重ねながら水嶋の衣服を脱がしにかかる。
「先にシャワーを浴びたい」
ワイシャツ姿で水嶋は訴えかける。さすがに営業周りで汗を掻いていた。
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