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水嶋が目を覚ますと、カーテンの隙間からは強い陽射しが差し込んでいた。朝方まで風見と抱き合い、気づけば気絶するように寝てしまっていたようだった。
全身が重だるく、尻の狭間の異物感に水嶋は眉間を寄せる。
隣でまだ寝ている風見を起こさないようにベッドから起きると、一足先にシャワーを浴びに浴室へと向かう。
付けっ放しになっていた指輪を外し、なくさないように箱にしまうと洗面台の棚に置く。
いつも指輪を外すのは風呂に入る前だ。そこでやっと、心から安堵することが出来る。そんな生活をかれこれ三年は続けていた。
ぬるいシャワーを浴びていると、体に残された多くの鬱血痕に気づく。羞恥心とともに、まだ寝ている男のことを思い浮かべる。
夢じゃない。その事に嬉しく思う反面、拭いきれない不安もある。
部下とこういう関係になってしまった今、会社で平然を装って普通に接することができるのか自信がない。
これまで既婚者だと嘘をついて過ごしてきていたが、更に隠し事が増えたことで神経を擦り減らすことになりそうだった。
重たいため息を吐き、水嶋は浴室から出る。
リビングに戻ると、ちょうどワイシャツにスラックス姿の風見が入ってくるところだった。
「おはようございます」
そう言って風見は柔らかな笑みを浮かべた。
おはようと返し、居た堪れなさから水嶋は視線を逸らす。十歳も下の男に抱かれ、身悶えたと思うと、本人をまっすぐに見る勇気はない。
「俺もシャワー借りていいですか?」
「ああ、タオルも適当に使っていいから」
礼を述べて風見は水嶋の横を通って、浴室へと向かう。
いつの間にか張っていた肩の力を抜き、水嶋は遅い昼食を用意しようとキッチンへと向かった。
何を作ろうかと、冷蔵庫を覗き込んで思案する。
三年前からお弁当を作り始めたことで、自炊することが増えていた。食材もそこそこ保存の利く物が押し込まれている。
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