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「へぇーそうなんですか」
どこか冷めた声にちらりと視線を向ける。風見は無表情で皿を見つめていた。綺麗に整った顔のせいか、妙に人形のように無機質に感じてしまう。
「……できたから食べよう」
暗澹とした空気から逃れるように水嶋は、用意された皿に盛り付けていく。
「運びますね」
さっきの陰鬱とした態度と一変、風見が穏やか表情でテーブルに運びだす。ホッと胸を撫で下ろし、水嶋も残りの皿を持ってテーブルへと向かう。
向かい合わせで食事を取る。風見は何度も美味しいですと言っては、甘い笑顔を水嶋に向けた。恥ずかしさとむず痒さに水嶋は「良かった」とだけ言って、スープを口に運んだ。
食事を終えると、風見が片付けを請け負った。これからどうするのかと落ち着かない気持ちで、風見の背を見つめる。
帰って欲しいようで、帰って欲しくない。心は振り子のように右往左往していた。
「そろそろ帰ります。水嶋さんも疲れているでしょうし」
洗い物を終えた風見がそう言って、身支度を調え始める。
「……分かった」
一人になれると安堵する一方で、やはり寂しい気持ちも込み上げてしまう。それでも引き留めるには、心の整理がついていなかった。
「そんな顔されたら帰りにくいです」
そう言って風見は水嶋に近づいた。
「風見さんが呼んでくれたら、いつでも来ますから」
風見が囁き、何度も角度を変えて唇を重ねてくる。求めるように水嶋が薄らと唇を開くと、濡れた舌が割り込んだ。歯列をなぞられ、下腹部に甘い刺激が走る。堪らず首筋に腕を回し、自らも舌を絡ませる。
「ふっ……ッ……風見くん」
目の縁が濡れ、頬が熱くなる。縋り付くように風見のスーツを握った。
「これ以上は我慢できなくなるんで」
濡れた水嶋の唇を舌でなぞり、風見が離れてしまう。
我慢しなくたっていい。その言葉をすんでで飲み込んだ。
熱を持て余したまま風見を見送ると、水嶋は久々に自慰に耽った。
昨夜の風見との行為を脳裏に浮べ、右手を動かす。シャツのボタンを外し、彼の触れた素肌の部分を左手で触れる。
唇、首筋、胸、腹部、太股――
至る所につけられた鬱血痕。その痕を指先で辿っていく。
究極の所有の証。
指輪以上にそれは、愛を強く主張しているように感じられた。
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