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「やっぱり嫉妬してくれていたんですね。嬉しいな」
「君はなにを言って――」
「ちょっと待ててください」
風見はそう言って、水嶋から離れるとベッドから降りてしまう。訳も分からず水嶋は体を起こし、ベッドで膝を抱えた。しばらくすると風見が戻ってきて、ベッドに腰掛ける。
「こっちに来て座ってください」
言われたとおりに風見の隣に腰掛ける。
「本当はクリスマスに渡すつもりだったんですが――」
そう言って掌サイズの箱を開く。中にはシルバーリングが二つ並んでいた。
「水嶋さんがつけている指輪が元恋人から貰ったやつだって聞いた時、何度もこっそり捨ててしまおうかと思ってたんです」
物騒なことを言いつつ、水嶋の手を優しく掴む。
「でもそれだと、水嶋さんが困るだろうなって。それに指輪さえつけてれば、そうそう水嶋さんに手は出せないと思ったので」
水嶋の左手の薬指に指輪が嵌めながら、風見は続けた。
「だったら自分が買えば良い。そう思って買いに行ったんです。そしたらたまたま、倉橋さんに会って」
とんだ勘違いをしていたと知り、血の気が引く思いで風見の手に乗っている自分の左手に視線を落とす。
新しい指輪は銀色の光沢が美しく、少しカーブを描いた洒落たデザインだった。
「休み明けに会社に行ったら、勝村さんから倉橋さんと結婚するのかって聞かれたんです。もちろん否定しましたよ。驚いて何でそんな話になっているのか聞いたら、水嶋さんが見かけたって言ってたからって――」
今度は自分の薬指に指輪を嵌めつつ、風見が苦笑を漏らす。
「水嶋さんの口から聞いてくるかなって思って黙ってたんです。そしたら全然言ってこなくて、挙げ句の果てに俺のこと避け始めたじゃないですか。理由を聞いても疲れているとか、仕事とかって言い訳されて。前に言いましたよね、俺。水嶋さんに隠し事されるのが嫌だって」
「……ごめん」
一人暴走していたことに、申し訳なさが込み上げる。これでは信用していないのと一緒だ。
「君の口から別れを告げられるのが怖かった。だったら、君が飽きて自然に離れていくまで待とうって――本当だったらちゃんと普通に接するつもりだったんだ。嘘を付くことには慣れているからね。きっと上手くやれるって思っていた」
でも実際は無理だった。食事も喉を通らず、目を閉じれば風見と倉橋の幸せそうな顔が脳裏に浮かぶ。風見と顔を合わせれば、自分とはやっぱり釣り合わないのだと劣等感に苛まれていた。
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