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恋人はきっと俺が好き?1-4

 中学のころに俺は吉武と付き合っていることになっていた。  嫌がらせとしての悪趣味な冗談だったが吉武は真に受けて喜んだ。  だが、俺の態度が幼なじみに対するものと変わらないと訴えたかと思うと風紀委員長と付き合っていた。  俺のことを好きだったらしい気持ちは風紀委員長がちゃんとした恋人になることで昇華された。  吉武から直接リアクションはなかったが俺は以前の状態に戻ったのだと解釈した。  幼なじみで友人だと思っていたからこそ吉武が一人で勝手に空回りをしていたとはわざわざ指摘しなかった。  だから、俺の内心など知らない副会長は大きな勘違いをしている。  副会長だけではなく周囲の人間すべてが同じ思い違いの中にいるのなら吉武のお節介の理由がわかる。  自分だけが幸せになってしまったことに罪悪感があるんだろう。  俺と珠次に幸せになってもらいたいから転入生と唇が触れあった俺を見て蹴り飛ばしてきた。  珠次がいるのに何をしているんだという吉武の言葉を聞き流したのは悪いことをした。    生徒会室を出て歩きながら早く珠次に会いたくなった。  抱きしめたい気持ちから走りだしたくなるが体中が痛いので進みは遅い。  格好悪いので人目につかないルートを選択した。  遠回りになるが気持ちを落ち着けてるのにはちょうどいい。    今まで珠次が自分のどこを好きなのか、嫌われてはいないか、そのことばかりを考えていた。  自分の愛は伝わっていると信じきって疑わない。  けれど、もし俺と同じように珠次が不安に襲われていたらどうしよう。そう初めて思った。    珠次に浮気をしているのかと聞かれたことがある。  そんな事実はないのですぐに否定した。  珠次はそれを信じてくれたはずだ。  廊下で出会ったときに今日は少し暑いという会話と同じ淡々とした調子で浮気の是非を問われた。それは副会長のいう通りにおかしいのかもしれない。不安を覚えてそれこそ吉武のよくわからないヒステリーみたいな状態になるべきなのかもしれない。  でも、珠次は珠次で吉武ではない。珠次の自分のリズムで生きていて冷静で物怖じしないところが好きだ。  俺が浮気をしていないと言ったら誰が何を言っても珠次は俺を信じてくれる。  珠次が信じてくれていることを俺は信じている。  だから、自分の愛が珠次に伝わっていないなんてことを考えたこともない。  セフレのような関係だとは一度も感じたことがない。  

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