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会長は俺と別れたくないらしい1-2

   この学園で生活してきたわけではないからこそ俺はより学園内の人間と行動にズレがある。  それは自覚している。  だとしても、寄ってたかって無遠慮に踏み込まれていい話題じゃない。  親衛隊長のセンパイも目の前の元彼も俺の言動を否定して認めようとしない。  彼らの考えに枠の外にあることを許そうとしない。  聞く耳を持つことのない彼らに届く言葉を絞り出せない俺が悪いと思っていた。  恋人であるということで俺は全ての答えが出ていると思っているし、仮に恋人という肩書きがなくなっても好きな気持ちが急に消えたりはしない。    人にはどうしようもなく好きなものがあると思う。  深い理由やエピソードなどなく心にカチッとハマるもの。  無意識のものだから説明は難しい好きなものを好きな理由。  それをわざわざ聞きたがるなんて野暮で野次馬根性の極みだ。    パンダ的な白黒な髪の毛や調度品だけでなく笹峰明頼を好きな理由は何気ないために共感しにくいものかもしれない。    自分でも見ていたいからという理由だけで時計の振り子を延々と眺められるところはおかしいと思う。  玄関に飾られた時計を見ている俺をおかしいとは言わずに自分の部屋の時計を見るかと勧めてきた笹峰明頼。  恋人になっても笹峰明頼を放置して時計の振り子を見ていた。  それをすぐに邪魔せず鳩が鳴ってから首筋にキスをして構ってほしいというサインを出す。  髪の色のせいもあって、笹峰明頼はどこか尖ったロックな人間に見えるが優しい。  自分の気持ちが先行してしまったらきちんと気づいて反省している。  だから、俺からあえて言うことは何もない。    笹峰明頼が口に出さないだけで俺にだって悪いところはいっぱいあるだろう。  お互いに悪いことを言い合わないことが正しいとは言わない。  ただ俺は言う必要がないことはいくらだってあると思っている。  良いところも悪いところも分かった上でそばにいて苦痛を感じない人はそんなに多くないはずだ。  

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