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恋人はハッキリ言うのが好き1-4

「そんな嘘くさい説明で納得できるわけない」 「東町、お前が納得する必要はない。これは恋人である俺が納得するかどうかだ」    言い切った珠次はいつもとあまり変わらない表情をしている。  俺と別れるかどうかの瀬戸際にもかかわらず変わらない。   「俺は俺の恋人が他人を毎日抱いていようと、それがなぜか周りに知られて広まっていようと気にしてない」  そこは気にしてほしいし、他人を抱いているなんてことはない。  噂は噂で事実ではない。  俺の視線に珠次は首を縦に振った。   「浮気があってもなくても、浮気だと周囲に思われた行動をとったのは事実ですね。でも、責めるつもりはありませんよ」 「別れるかって」 「俺と付き合っていることがストレスになるなら別れるべきかと思いました」    珠次はあくまでもどこまでも優しい。  牧田が俺をフォローするためなのか珠次は冷たいと口にすることがある。  まったくそんなことはない。珠次はいつでも優しくてあったかい。   「簡単に別れられるような気持ちしかないなら別れればいい、それで俺と」  珠次の気持ちが簡単だったのかはともかく転入生がおかしなことを言ってくる。 「珠次と別れてもお前と付き合うとかないから」 「なんでだよ!」 「逆になんで俺と付き合えると思ったんだよ」 「押し倒してキスしたなら結婚するしかないっ」 「お前が俺のネクタイを引っ張ったからだろ」    俺はいろんな意味で被害者だ。  キスをしたから浮気になるかもしれない。  だが、浮気をしたくてキスしたわけじゃない。  これはとても大きな違いだ。    けれど、俺にとって大きいだけで誰にとっても大きいかは別だ。  珠次の価値観は俺のものとは違う。    どこか祈るような心地で珠次を抱き寄せて唇を重ねる。  転入生に見せつけるように角度を調整しながら触れあった。  珠次は拒絶せずに俺に身を任せてくれる。   「恋人同士のキスはこういうものだ。唇が合わさればいいってもんじゃない」 「西宮と別れて俺と付き合って。違う。付き合うべきなんだ。もうすでに俺と付き合ってる!!」    やっぱり薬物中毒者で話が通じない。  どうしようかと思っていたら珠次が転入生を殴りつけた。   「人の恋人に無理やりキスをした人間は殴っていいって校則に載ってました」    珠次が言っているのは恋愛関係での揉め事に風紀委員会は関与しないというものだろう。  風紀の仕事は痴話げんかの仲裁ではなく生徒たちが知らないところでタバコや酒や薬やレイプをやりださないか見張ることだ。  恋愛関係での暴力で退学や停学には絶対にならない。   「フラれたんだから潔く身を引くのが普通だろ」    どこか吉武に言う分も含んでいる気がした。  思うところがあっても先輩だから言わずにいたのかもしれない。    珠次は主体性がないどころか自分をハッキリ持ちすぎている。  適当さがない。  そういうところを尊敬している。  

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