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恋人はハッキリ言うのが好き1-5
「東町、お前のせいで会長はパンダヘアーがぐちゃぐちゃで全体的に疲れた雰囲気を出してる。それについて言うことはあるか」
「俺と付き合えば毎日が楽しくなる!」
「お前のことを異常者だと思っている会長がお前といて楽しいわけがないだろ」
酷い言葉だが事実だ。
俺が簡単に言えないことを簡単に言ってみせる珠次はすごい。
やりたくないことを嫌々しているのではなく珠次は珠次で楽しそうだ。スッキリした顔をしている。
「俺も俺で言葉の足りなさを知ったから恋人とちゃんと話し合うことにする。東町は自分の部屋に戻れ」
命令口調にも感じる珠次の態度に殴られたこともあってか転入生は怯えた。
周囲を見渡して誰もいないことに焦ったように「諦めないっ」と捨て台詞を残して去って行った。
どうして諦めないのかと思わずつぶやいた俺に珠次は笑った。
久しぶりに見る悪いタイプの笑顔だ。
「俺たちが熱愛中の恋人同士に見えないから?」
そのことに関してはどういう対策をするべきなのか分からない。
珠次には考えがあるのか俺を招きよせたかと思うと耳元に近づいて囁いてきた。
内容につま先立ちの珠次がかわいいという気持ちは吹き飛ぶ。
「お互いに浮気をしていたからですかね」
言葉通りに受け取れば俺は浮気はしていないが珠次は浮気をしていたということになる。
珠次が俺の噂に平気な顔をしていたのは副会長が言う通りだったんだろうか。珠次は俺のことをセフレぐらいにしか思っていない。だから珠次は傷つかないし嫉妬もしない。
セフレは珠次の口から恋人だと吉武に語られたことで否定していいはずだ。
なら、浮気とはなんだろう。
血の気が引いて瞬間的に視界が暗くなる。
「にゃー?」
わからないのかというニュアンスで珠次が鳴く。
いつもなら和むやりとりが今日は無理そうだ。
深呼吸をすると暗くなっていた世界は元通りになった。
今から始まるのはお互いに知る必要のないことだ。
そんな予感がする。
耳をふさいで逃げてしまったほうがいい。
目を閉じて見なかったことにするべきだ。
そう思うのにどこか照れながら自分のカバンを抱きしめるは珠次はかわいいので目が離せない。
カバンについたパンダのマスコットがゆれる。
実は俺よりもパンダが好きだという話なら前から知ってた。
浮気だとは思わない。
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