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会長と俺に会話は必要ないらしい?1-1

 言わないなら言わないままでいいと思っていた。  カバンの中を笹峰明頼に見せながら俺はちょっと照れた。  気づいてないなら隠していてもいいはずのことだ。    転入生である東町に言い寄られた末の事故を笹峰明頼は浮気だと定義した。  俺は浮気には感じないけれど笹峰明頼は浮気をしてしまったと混乱して落ち込むほどのことだった。  だから俺も言わないでいいだろうことを暴露する。  お互いに言わなくても良かったんじゃないのかという気持ちを持つなら今回のことは喧嘩両成敗だ。  喧嘩をした覚えはなくても他人から見て痴話喧嘩になると思う。   「え? 珠次、これって」 「だめっ、ですっ」    いくらアーティスティックな見た目でも用途が用途なのでカバンから取り出して凝視されるのは恥ずかしい。  モノを握っているらしい笹峰明頼の手をカバンの外に出さないようカバン越しに掴む。  疑問符を浮かべているのはわざとなのか天然ドSなのか。   「これって」 「にゃー」 「使ったのか? 使ってたのか? いつ見つけた!?」 「にゃーにゃー」    言ってもいいけれど、目を血走らせている笹峰明頼が面白いので「にゃー」で言葉を濁す。  俺が名称を口にすると羞恥プレイの気分になるので「にゃーにゃー」はちょうどいい。  強引にカバンから手を抜いたと思ったら笹峰明頼は俺の手を取って歩き出す。  部屋に帰るんだろうと思ったら、その通りだった。  メチャクチャ早足で俺を引きずったので笹峰明頼の部屋に着くまでの好奇の視線はすごかった。  次はどんな噂が流れるのか他人事のように考える。    言い続けていれば本当になると思っている生徒たちが流す噂。  自分たちの願望を事実のように口にする彼らはきっと「会長がついにキレた」とかなんとか言うんだろう。  俺を抱きしめながらベッドにダイブした会長はキレていると言えばキレているんだろう。  湧き上がる欲望でどうにかなりそうだと顔に書いている。寄せられた眉の感じがセクシーでつい笑ってしまうと喉を舐められた。   「……珠次に、キスをする数が少ない気がした」 「そうですか? あまり感じていませんでした。首とか耳の裏によくされてるから」 「転入生と唇が接触した時に思い至った」 「ショックだったんですか」    うなずく代わりのように「べあっ」と小さく聞こえた。  頭をなでると笹峰明頼になでられ返される。  お互いに頭をぐちゃぐちゃにして笑い合って手をつないで寝転がる。  

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