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番外1.涙の後に
「あ……ちょ……しろ……んっ……こんな……所、で……」
深く重ねられる唇の合間から、剣治が荒い吐息を漏らし、恥ずかしそうに身を捩る。
「ずっと諦めていたんだ。もう我慢できるか!」
濡れた服が肌に貼り付くのも構わず、志郎は剣治の体を掻き抱き、息も奪うほど激しく口付ける。
ずっと諦めていた。
罪の意識から、愛してはいけないと、ずっと気持ちを押し込めて――
『愛してるよ、志郎』
剣治の方からそう言われ、志郎は自分の耳が信じられなかった。
それが今、志郎のこの腕の中にいる。
キスをして……恥ずかしそうに顔を赤らめている。
唇を離した志郎は、まぶしい物を見るように目を細めて、感触を確かめるように剣治の頬を撫でた。
「剣治……本当に……俺で良いのか……?」
「当たり前だろ、志郎」
穏やかに微笑んだ剣治は、慰めるように優しく志郎の頬に手を添える。
「志郎が好きだよ……志郎以外なんて、誰も考えられない」
「剣治……」
噛み締めるように呟いた志郎は、もう一度、剣治を強く抱き締める。
「もう……絶対に離さないからな」
「志郎……」
愛惜しそうに名前を呼ぶ剣治が、感極まったように何度もコクコクと頷く。
「……やっぱり我慢できねぇ!」
素早く剣治の頭を固定した志郎は、驚きで開かれた唇に舌を差し込む。
「んんっ……! ふ……んぅ……」
口内を熱い舌で掻き回されて、剣治の鼻から淫靡な息が漏れる。
志郎の舌が剣治の舌を捕らえ、クチュクチュと水音がするほど、激しく絡み付けた。
恥ずかしさから逃げようとして、剣治が身体を捩っても、志郎は離さない。
唇の角度を変えてより深く繋がり、舌で歯列をなぞってやれば、剣治の足がガクガクと震えた。
口付けをしたまま、志郎は剣治の身体を軽く押してやる。
木に背中が当たった剣治は、ハッと我に返ったのか、慌てて志郎を押し止めようとした。
けれど志郎は退けてやる積もりも無く、剣治の唾液をすすり上げ、熱くほてった舌をむさぼる。
「んく……ふぅ……」
すると次第に剣治の身体から力が抜けていき、肩を押していた手ももう、すがり付くようにライダージャケットを掴んでいた。
感じ過ぎて潤んだ剣治の目元が、赤く染まって甘美な色気を匂わす。
「剣治……すんげぇ可愛いぜ……」
「しろぉ……」
すっかり息の上がった剣治は、肩を上下に揺すりながら、上目遣いに志郎を見詰めた。
ニヤリと笑った志郎は、剣治のワイシャツの裾をたくし上げ、右手を潜り込ませる。
「あっ、ちょ……だ、ダメだったら、志郎! 誰か来たら――」
剣治の言葉を遮るように、志郎は首筋に舌を這わせ、頭の付け根を左手の指先で摘まんでやった。
「あっ……っ!」
案の定、声を上げてピクンッと震えた剣治は、慌てて右手で口を塞ぐ。
志郎は悪戯っ子のように、クスクスと笑った。
「大丈夫だって。こんな所、誰も来やしねぇよ」
「で、でも……」
不安がる剣治の脇腹を、志郎が優しく撫で回すと、剣治の身体は面白いほどピクピク震える。
口では嫌だ嫌だと言っていても、剣治の身体はちゃんと感じているらしい。
剣治の頬に軽くキスした志郎は、左手も服の裾から突っ込み、ほどよく締まった脇腹を上下になぞる。
「んっ、ふぅ……ダメ、しろ……」
必死に声を押さえながら、プルプルと身体を震わせる剣治に、志郎はククッと低く笑う。
「なぁ……声、聞かせろよ……剣治?」
剣治は、イヤイヤと可愛く首を振る。
ニヤッと笑う志郎は、剣治の耳に息がかかるくらい、わざと唇を近付けた。
「人が来たら、ちゃんと教えるって……なぁ……? け~んじ~?」
低い声で名前を呼び、志郎は剣治の腹部を撫で上げ、隠れた乳首を探す。
「ふぁあっ……しろっ、ダメぇ……!」
焦った剣治が、まだ濡れた服の上から、片手で志郎の手を止めようとする。
それを潜り抜け、志郎は剣治の両乳首をキュッと摘まんだ。
「あぁっ……!」
剣治が堪らず声を上げ、ビクッと身体を震わせた。
雨で濡れたせいか、剣治の乳首はすでに硬く尖っていた。
志郎は片方をクリクリと優しく捏ね回し、もう片方は少し痛いくらいにキュウキュウと摘まむ。
「ふあぁん……それ、ヤぁ……!」
高い声で喘ぐ剣治は、両手で志郎の手を掴むが、うまく力が入らないらしい。
ガクガクと震える剣治の足の間に、志郎は片足を割り込ませ、太股で股間を刺激する。
「うあっ……!」
「硬くなってるな……ホントは気持ち良いんだろ……?」
少し意地悪に囁き、志郎は激しく太股を揺らす。
甲高い声を上げる剣治が、快感の涙をボロボロと溢して、志郎の足に動きを合わせる。
「あぁ……しろ……も……出ちゃ……」
志郎は左手で乳首を弄ったまま、右手を服の下から抜き取り、剣治のベルトを器用に外した。
「足……開いて……?」
志郎が囁くと、ぼんやりとした顔の剣治は、ゆっくり足を開いていく。
剣治の頬にご褒美のキスをして、志郎は前をくつろげた背広のズボンに手を差し込み、パンツの上から剣治のモノを撫でる。
「ふああ……しろ……」
「パンツもぐっしょりだな……出したい……?」
剣治はここが外だという事も忘れて、コクコクと頷いた。
志郎はペロリと下唇を舐める。
「なら、どうして欲しい……?」
「え……?」
困惑した顔の剣治が、志郎の欲望を煽る。
それでも志郎は意地悪に微笑み、すでに硬くなっているそこを、布越しに揉みしだく。
「あっ……しろ……」
「パンツぐちょぐちょで、気持ち悪いだろ……? ほら、俺にどうして欲しい……?」
すでに硬くなっているモノを、なおも布越しに激しく扱くと、パンツの下でグチャグチャと濡れた音が響いた。
「んっふ……しろ……も、さわ、て……」
「どこを? どうやって……?」
やっと言葉を絞り出した剣治に、まだ意地悪をして聞くと、剣治は恥ずかしそうに顔を反らす。
「……そこ……直接……んああ……」
「良く言えたな……」
両手でズボンごとパンツを下ろしてやると、剣治のモノが、待ち兼ねたようにプルンと飛び出した。
天を向いてダラダラと蜜を流す肉棒に、志郎はゴクリと唾を飲む。
「ご褒美、やろうな」
優しく呟いた志郎は、両手で剣治のモノを捧げ持ち、溢れる滴をペロリと舐め取った。
「ひぁっ……だっ、ダメ! しろ……!」
声を上げた剣治は、志郎を止めようと髪を掴むが、それに構わず志郎は肉棒を舐め回す。
裏筋を丁寧に舐め上げ、括れを舌でなぞると、ビクビク震える先端から蜜が溢れ出した。
「ふわ……はぁ……あぁっ……」
艶のある嬌声を上げ、ブルブルと震える剣治が、泣きそうな顔で志郎を見下ろす。
チラッと目線を上げ、剣治と目を合わせた志郎は、見せ付けるように鈴口を舌先で抉る。
「あ……しろ……ダメ……出ちゃう……」
「いいぜ……イけよ」
ニヤッと笑った志郎は、パクッと剣治の熱を咥え、強弱を付けて吸う。
「ひあ! だ、ダメぇ……ああ、ああああぁぁぁぁぁっっ!」
ひときわ甲高い声を上げた剣治が、ビクンと身体を跳ね上げ、熱い欲望を志郎の口に解き放った。
ぐったりと木にもたれた剣治は、恍惚とした顔で目を閉じ、全身で荒く呼吸している。
……志郎が口の中の白濁を飲み込むのも、気付いていない。
ペロリと下唇を舐めた志郎は、口端から零れた白濁を手の甲で拭い、そっと剣治の右足を持ち上げる。
「ん……しろ……?」
自分が何をされているのかも分からず、蕩けた顔の剣治が、跪(ヒザマズ)く志郎を見下ろす。
ニヤリと笑って見せた志郎は、おもむろに剣治の足の間に顔を入れ、曝(サラ)け出された秘密の蕾に舌を這わせた。
「あぁっ……ヤだぁ……汚な……あん……」
改めて志郎の髪を掴んだ剣治は、お尻を逃がそうとして前屈みになり、逆に志郎を股間に押し付けるような形になっている。
志郎は喉の奥でクックッと笑う。
「ローションがねぇんだから、仕方ねぇだろ? 剣治の身体は、どこも甘くてうまいな」
「な……そんな、事……ふぁ……」
シワをなぞるように舌を滑らせていた志郎は、不意にピクンと動きを止めた。
「しろ……?」
「シッ……! 誰か来たな……」
「えっ……!?」
思わず声を上げた剣治は、慌てて自分の口を両手で塞ぐ。
その内、神社の表の方から、女子高生のような声が聞こえてきた。
『ねぇねぇ、ここってさぁ、ホントにゴリヤクあるのぉ……?』
『もうバッチリ。ここで祈れば、絶対に恋が叶うんだから!』
女子高生達は、普通の参拝客らしい。
どうやらこの神社には、恋愛成就のご利益があったようだ。
キャーキャー喚く女子高生達を気にして、剣治は口を塞いだまま、不安そうに視線をさ迷わせている。
志郎は底意地が悪そうな顔で、またニヤリと笑い、ゆっくりと舌の動きを再開した。
「っ……!」
ビクッと震えた剣治が、志郎の口から逃げようと片足で身を捻り、激しく腰を振る。
けれど、うまくバランスを取って押さえ付ける志郎は、涼しい顔で剣治の秘部を濡らし続けた。
「んん……ふぅ……」
羞恥で顔を真っ赤にした剣治が、押さえきれない鼻息を漏らし、身体をブルブルと震わせる。
志郎は尖らせた舌をゆっくりと差し込み、できるだけ剣治の奥深い所まで唾液で濡らす。
入れる時に剣治が痛くないように、ゆっくりと丁寧に唾液を送り、余す所無く擦り付けるように舌を這わせて……
少しすると剣治の鼻息が甘くなり、また勃起し始めた自身から、雄の匂いを発していた。
『それでさ……』
『えぇ、やだぁ~……』
女子高生達の声が、まだ聞こえている。
人に見られるかも知れないこんな状況でも、剣治の身体は、志郎の舌使いに従順に感じているらしい。
志郎は指を一本、ゆっくりと静かに、剣治の中に差し込んでいく。
「んぅ……っ!」
強く目を瞑った剣治が、快感に喉を反らし、志郎の指をキュウキュウと締め付けてきた。
志郎の唾液で湿った中を、広げるようにぐるりと掻き回してやる。
『……うっそ~、それってマジ?』
『マジよ、マジ。だからさぁ……』
女子高生のおしゃべりも白熱しているらしい。
志郎はもう一本指を増やして、柔らかくなり始めた剣治の肉壁を、さらに広げていく。
剣治の先端からも、また蜜が溢れ出し、志郎の指に伝ってクチュクチュと水音を発した。
ゆっくりゆっくりと内側を広げ、さらに指を増やしてバラバラに動かし、剣治を刺激してやる。
「んふ……んっく……」
剣治の呼吸が荒い。
蜜を垂らす剣治の先端も、完全に上を向いて、腹にくっつきそうだ。
目の前でピクピクと震える剣治のモノに、志郎はゴクリと唾を飲む。
すでに硬くなっている志郎の自身も、窮屈なズボンの中で張り詰め、もう痛いほどだった。
いそいそと指を抜いた志郎は、剣治の耳に唇を寄せ、小さな声で囁く。
「悪い、俺も、もう限界だ。……剣治の中に、入らせて?」
ビクッと反応した剣治は、イヤイヤと首を振る。
声が漏れる事を心配しているのだろう。
「お前も辛いだろ? 大丈夫だから……キス……さして?」
涙にキラキラする目を志郎に向け、剣治はおそるおそる手を離した。
「しろぉ……」
「俺の首に、手ぇ回して――?」
すがるように囁く剣治に、志郎は優しく良い聞かせ、剣治の手を誘導する。
片足を上げたままでバランスが悪いのか、剣治は志郎の首に腕を回し、ギュッとしがみつく。
先ほどまで入口をほぐしていた手で、剣治の背中を支え、志郎は貪りつくように剣治の口を唇で塞ぐ。
ピチャッピチャッと、水音が響くほど深く舌を絡め合わせ、剣治は夢中で志郎の口付けを貪った。
志郎が欲しくて堪らないと言うように……
志郎はその積極的な口付けに応えながら、背中を支えていた手で器用にベルトを外した。
そして待ちきれずに涙を流す自身を、剣治の入口に宛がい、志郎は一息に突き上げる。
「んんっ! んぅんん~~っ!!」
重ね合わせた口の中で嬌声を上げ、ビクビクッと震えた剣治が、志郎との腹の間でブシュッと勢いよく精を放った。
『そろそろ行こっか?』
『だね~』
女子高生達が十分に離れていくのを待って、志郎は剣治の唇を解放した。
「やっと行ったな……たく、女ってのは、ホントに話しが長(ナゲ)ぇよなぁ……剣治?」
目を閉じた恍惚の顔をする剣治は、口の端からヨダレを垂らして、身体をヒクヒクと痙攣させている。
「……剣治までイっちまってるよ……おい、剣治? 大丈夫か?」
「あぁ……しろ……」
志郎が軽く身体を揺らしてやると、とろんとした目を開けた剣治は、うっとりと微笑んだ。
志郎は優しく剣治の頭を撫でた。
「悪い……少しイジメ過ぎたな……」
首を横に振った剣治が、志郎の首にすがりつき、甘える猫のように頬を擦り寄せてくる。
その艶かしい仕草に、志郎の中でくすぶっていた情欲が、一気に燃え上がってきた。
下唇をペロリと舐めた志郎は、不安定に体を支える剣治の左足に手を添え、そっと太股に滑らせる。
「ふわぁっ……だ、ダメぇ……」
「まだ入れただけだぜ? 俺はお預けか?」
剣治が必死に首を横に振った。
「ちが……けど……あっ……気持ち、良過ぎて……あんぅ……頭……変に……なるぅ……」
志郎はクスリと笑う。
「なっちまえよ……いや、俺無しじゃいられなくしてやる」
「しろ……」
すがるように名前を呼ぶ剣治の唇を、志郎は唇でなぞり、舌を滑らせる。
それだけで察した剣治が、軽く口を開いて、志郎の舌を迎え入れた。
「んぅ……ふ……」
互いに舌先を擦り合わせ、交換した唾液を共にすすり合う。
クチュッ、クチュッ……と水音が響き、二人の耳を犯す。
熱い息と共に唇を離せば、銀色の糸が架け橋のように舌を繋いで、儚く消えてしまった。
「剣治……愛してる」
「僕も……愛してるよ、志郎……」
剣治が志郎の首にギュッとしがみつき、志郎はゆっくりと剣治の軸足に触れ、勢い良く持ち上げた。
支えを無くした剣治は、自重で落ちるまま、志郎のモノを深く呑み込む。
「あっ……! しろ……深……あぁっ……!」
首を仰け反らせた剣治が、嬌声を上げてよがる。
もう完全に、外だという事を忘れているのだろう。
剣治が落ちないように抱え直した志郎は、うまくバランスを取りながら、何度も腰を突き上げる。
しっかりと志郎の首にしがみつく剣治は、快感にヨダレを垂らし、きつく閉じた目からボロボロと涙を溢した。
「あぁん……しろ……もぅ……イくぅ……」
「俺も……注ぎ込んでやるぜ……剣治!」
――その後、何度も絶頂を迎えた二人は、暗くなってから神野家に帰った。
激し過ぎて足腰の立たない剣治と、彼をバイクまで背負う志郎と――
再び繋ぎあえた手を、二度と離さないと誓って。
……END.
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