まかきゃらや。 それが、会社名。 教わったときは何かの呪文ですかと聞いてしまった。 『起業メンバーの名前をつないだら、福の神の名前になったから、そこからつけた……らしい』 んだという。 大黒天という福の神の、マントラ？　なんだって。 「来てくれてよかったよ。ウチは業務内容が明文化しにくくて、なかなか募集出せなかったからさ～」 からからと笑ってそういったのは、社長の浦大成さん。 威圧感があるわけじゃないけど、体格のせいなのか存在感はある。 その大きな体の浦さんよりも、存在感があるのは、日本人離れした美貌の男性。 専務の山田ノアさん。 「業務内容もだけど、アクが強すぎるんだよ、ウチのメンバーは」 「そうそう。だから、居着く人は長いし、合わない人は即日さようならだもの」 営業部長の佐野天音さんは某歌劇団出身の有名女優を思わせる、しゃなりんとした女性。 この三人が、要さん曰く『大黒天』なんだという。 外勤チームの重役たち。 「北島くんは、内勤希望だっけ？」 「はい、できれば」 おっとりした雰囲気の男性は、長友由紀さん。 内勤チームの部長だと聞いたけど、腕カバーして眼鏡をかけている風貌は、昭和の役所の人。 内勤は、常務の要さんと長友部長が仕切っているそうだ。 それから、最重要人物。 「まあまあ、食べさせ甲斐のありそうな人だこと。アレルギーはある？」 朗らかに笑っているご婦人。 おばあちゃま、といいたくなるようなこの人は、福利厚生担当で、会社が入っているビルのオーナー、香山陽さん。 主要メンバーは六人。 あとはだいたい内外で所属を分けて、総勢五十人弱の企画会社。 「もとは家業手伝いっていうか、学生時代の『何でも屋』の延長なのね」 ほわほわと笑いながら、佐野部長が説明してくれる。 「『あんなことしてみたいな』っていう、ゆるい希望を拾ってきて実現するの。イベントだったり、モノを作ったり、内容は色々でね。自社でお応えできないときは、パイプ役というか……それぞれの人脈から、ご紹介できる先がないかを探したり」 「だから、器用貧乏大歓迎。逆に、専門でバリバリ働いてもらってるのは、経理くらい」 「はあ……」 「一度、体験しちゃったら普通に企業に入って、決まったことだけしているのが、退屈になっちゃって……次々仕事が入るのは、とてもスリリングで、エキサイティングなのよ」 専務と佐野部長によって、さらさらと手慣れたように説明が流れていく。 なるほど。 確かにアクが強い、説明のしようがない会社だ。 でも、楽しそう。 「篠森がつれてきたんだから、こちらとしては特に言うことはないよ。業務内容や、待遇面で希望があれば長友に言って。できれば、長くいてくれると嬉しい」 社長がそういってくれて、顔合わせはお終い。 オレは希望通りに内勤チームにデスクをもらうことになった。 変な会社。 だけどあったかい。 いい人たちっぽいし、いざとなったら要さんもいる。 「どう、なっちゃん、やっていけそう？」 要さんが、オレに聞く。 「はい」 「それはよかった。じゃあ、これからよろしくね」