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第17話

オレが小柄なわけではない。 要さんが大きいんだと思う。 多分。 ベッドの上に胡坐をかいた、要さんの腕の中にいい感じに納まってる。 背中から抱き込まれてあたたかくて、ふわふわする。 髪を撫でられて、耳たぶを触られて、思い出したようにキスをもらう。 「ふふ……」 「なっちゃん、ふわふわだね。気持ちい?」 「ん……」 「あー、ホントにかわいいなあ……」 はむはむと頬を甘噛みされて、笑ってしまう。 ぐりぐりと後頭部を要さんにこすりつけた。 仰向いた顎をそのまま固定されて、また、キスされた。 上下が逆になったキス。 オレの舌の裏側に、要さんの舌が入り込んで暴れまわる。 「ん……ぅん……む…」 喉の奥で甘えた声が出る。 息が上がって苦しくなるけど、キスが楽しくて止めたくない。 ちゅっと音をたてて下唇を引っ張るようにしてから、要さんが解放してくれた。 やっと空気吸えた。 息が上がってはふはふしてるけど、寂しくて体をねじって要さんに抱きついた。 「苦しかったら、ちゃんと言わなきゃ、ダメだよ」 「やだ」 「なーっちゃん」 「だって止めたくない」 「ああ、もう、ホントにどうしてくれよう。デレたらかわいいはずだと思ってたけど、ホントにかわいい……」 要さんがノーミソ溶けてるんじゃないかなって、謎の発言をする。 しながら、オレを宝物みたいに抱きしめて、耳や首元にキスをくれる。 腕の中にオレを閉じ込めて、ゆらゆらと体を揺らしながら、背中を撫でる。 「要さん……?」 「なっちゃんは今は何もいっちゃダメ」 「なんで? 気持ちよくて、眠くなっちゃうじゃん」 「うん、だからね、なっちゃん今すごい疲れてるから、一回休憩」 「やだ」 「大丈夫、ずっと一緒にいるから。だから、今は俺の忍耐力、試さないでね」 「……やだ」 子どもみたいにあやされてる。 嬉しくて気持ちくて、悔しいから、要さんにすりすりってした。 「ああ、この耐久試験はきびしいなあ」 要さんはそう言いながら、くすくす笑う。 笑いながら、オレをあやす。 ヨレヨレのボロボロだから、今は寝ろっていう。 オレはせっかく要さんとベッドの上で、もったいないって思ってるのに……なのに、気持ちよくて瞼がおちる。 この数日、ホントに怖かったんだ。 どうしたいいのかわからなくて、見つかったらどうしようって思っていた。 不安で眠れなくて、眠っても眠りが浅くていやな夢見て。 でも、もう大丈夫なんだ。 要さんが好きって言ってくれた。 暖かくて気持ちよくて、幸せ。 幼いころ実家で昼寝してて、目が覚めそうなとき、こんな感じだった。 気持ちよくてこのままが良くて、でも起きたらもっと楽しいような気がして、周りの音がふわふわ聞こえてくるのを、聞くともなく聞いていた。 「ああ……そうなんだ。うん、大丈夫、保護した。ヨレヨレだったから、今は寝かせてる……いや、そこでそれは鬼畜でしょ? 酷いねお前……お前の中で、俺はどんな酷いやつなのよ?」 タバコくさくて、でも手触りだけはパリッとして気持ちがいいシーツ。 聞こえてくるのは要さんの声で、あれ? って思いながら、うっすら目をあけた。 シーツは見えるけど、いない。 声はするのに、要さん、見えない。 手を伸ばして探ったら、すぐに大きな手がオレの手を握ってくれた。 ふふふ。 よかった。 嬉しくて、ふうって息をついて、また目を閉じた。

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