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第20話

受け取ってさらっと目を通す。 基本はカレンダー機能の応用。 「じっくり見てないですけど……手を入れれば、使えないことはないと思いますよ。ただ、どこまで手を入れるかとか、どれくらい費用や時間がかかるかとかは……」 「君に割り振ったら、できる?」 「オレが作業するってことですか? 今してる他の仕事を、他の方に任せていいなら……」 「うん、それは手配する」 「第二資材室のあれ、環境整えてもらえれば、できます」 オレの返事に、社長が目を丸くした。 「え?」 「……え?」 えって何? 「できるの?」 「できますよ」 「だって、芳根くんはそれ見た瞬間『なんですかこれ』って、言ってたよ?」 ああ。 社長の反応の理由がわかって、オレはちょっと笑ってしまった。 井上さんと同じ誤解だ。 「同じパソコン業務でも、プログラムと事務作業は全然違います。オレはこっちが本業です」 よかったー、と、天を仰ぐ社長の頭を、長友部長がペシン、と叩いた。 ええ? 叩いちゃうんだ。 それにしても、なんでこんなことに? こういう最終調整は、ホントは売り込んだ方がちゃんと持つはずなのに。 「契約書に、調整作業については何も書いてなかったんだよ」 要さんが、困っちゃうよねって指で契約書をはじく。 「何も?」 「そう。パソコン本体とプログラムだけの料金で、調整とか環境整えるのとかは、別料金扱いだった」 「それは……」 山内さんがしているのと、同じような、結構グレーゾーンの売り方。 「よくあるんだよ」 静かな顔で長友部長がオレを見て言ったから、話は伝わっているんだって察した。 「プログラマーの派遣が別料金にできれば、向こうはその分儲かるんだから、そうしたくなるのは当然。契約書に明記されていて、面倒を見てくれなかったら、詐欺だっていえるけど、でも、書いていないのだから、こっちの手落ち。こっちで何とかしなきゃいけない。そういうとこまできっちり読み込んでの契約なのが、本来の契約の結び方なんだ。なのに、この、バカ社長が!」 「よくあること、なんですか……」 「そう。腹の探り合いというか、だましあいに近いよね。でも、そういうものだ」 ああ。 オレ、山内さんの仕事を手伝っちゃって、詐欺の片棒担いじゃったのかもって、怖かった。 でもそういうことじゃなかった。 あれはそういうものなんだ。 そういえば大野も、山内さんのことは悪く言ってたけど、オレが手伝ったことは何にも言ってなかった。 逆に、山内さんにいいように使われるなよって、心配してくれてた。 だから、この仕事オレが引き受けたほうが、オレの気が楽になるって要さんは判断したんだ。 オレは、ホントに、モノを知らない。 全然まだまだだなあ。

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