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第2話
「西村さんは今日はどっかで食べていく感じですか?」
オフィス街には格安でランチを提供する店を始め、ちょっと贅沢なメニューで勝負している店や日本に普通に住んでいればまず口にも目や耳にもしない多国籍な料理を食べさせる店もある。
そのためか、西村達の同じ会社で違う支店の社員も何かにつけて、立ち寄り、ランチを楽しんで帰るという強者も多かった。
「いや、今日は午後イチで会議が入ってるから地下の売店にしようかと。岡田くんは……」
「俺は勿論、自妻弁当ですよ。最近、ゆうくんがピーマンを克服できるようにレシピ、開発しまくってます」
実は、岡田には藍(あい)という30歳の奥さんと佑(ゆう)という6歳の息子がいるらしい。
21歳の時に自分の血を分けた子がいると発覚して、岡田が大学を卒業したのと同時に籍を入れたという。
「俺は大学くらいすぐにやめて働くって言ったんすけど、藍ちゃんも藍ちゃんのお父さんもそれじゃ困るだろって。しかも、行くところないなら俺のところで鍛えてやるからって、就職も面倒も見てくれて。だから、藍ちゃん達には頭が上がらないんすよね」
「へぇ……」
「それに、料理は嫌いじゃないですしね。割と色んな飲食店でヘルプで入ってたんすけど、神ヘルプ降臨なんて呼ばれてたんすよ」
岡田は確かに軽薄さの抜けないところがある男なのだが、割と要領はさほど悪くなく、人の懐に入るのも上手くて、西村も買っていた。
それに何より、自分と違っていて、料理ができるのが単純に凄かった。
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