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第3話

「え、西村さんの家って定食屋さんなんですか?」  1度だけ何かの行きがかり上、西村の家族が経営している定食屋の話を岡田にしたことがある。岡田は物言いが大袈裟な男だが、割とこの反応は珍しいものではなかった。 「あ、いや、てっきり、西村家の華麗な一族みたいな感じで、ザ・エリート一家! ドン! バン!! 愚民ども参ったか!!! みたいな感じかなって思ってたんで」  これも言葉がはっきりしているか、濁されているか、淀んでしまっているかの違いはあるが、西村が接したことがある者の大体が岡田とほぼ同じような印象を持っていた。  しかも、 「じゃあ、もしかして、料理とか上手かったりします?」  と言われて、西村は困ることが多かった。 「まぁ、藍ちゃんも美人で、スタイルも良いし、育児も掃除洗濯もその上、仕事も完璧で、性格もめっちゃ良いんですけど、料理だけは殺人的にダメなんで、そんなに悲観することないですよ」  と岡田は西村を励ますように言うと、オフィスのエントランスをくぐって、自分のデスクのあるフロアへ向かうため、消えていく。 「殺人的って俺はそこまでじゃあ……まぁ、静かになったな」  岡田と別れ、ポツリとそんな感想が西村の口の端から溢れる。  岡田が昼食のことを聞いてくるまではテイクアウトも……考えていたが、30℃を超えていなくても、この暑さでは傷みそうだったし、西村自体も食が細めということもあり、余計に揚げ物や炒め物が多めに入った弁当類は買う気にはなれなかった。 「まぁ、いつものアイスコーヒーとサンドイッチにするか」  西村が地下の売店の方へ向かうと、見慣れない顔の1人の若い男がいた。  それこそ西村佑司の奇妙な出会いの相手だった。

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