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第5話

 サラリーマンの月日が流れるのはあっという間なのは本当のことらしい。  西村が自社ビルの地下の売店への道中で「いのさきべんとう」の店員と出会って、その日から1日が過ぎ、それが1週間になり、1ヶ月になり経とうとしていた。 「ちょっと出てくる」  西村は水曜日と金曜日の12時から10分程前になると、デスクを立って、部屋から出るようになっていた。  勿論、西村は部長補佐なので、部長に代わって会議や昼食を食べながらの打ち合わせ会、出張といったものがないという訳ではない。突然、電話がかかってくることや急ぎの仕事に追われていることもある。  だが、そうでなければ、西村にだって好きなものを昼食に選んで食べる権利はある。と岡田は考えていた。 「行ってらっしゃい~」  岡田は笑顔で西村を見送ると、椅子に深く凭れかかる。  あまり食に拘りがない年上後輩にして、4年間で上司になり、部長補佐まで登りつめた西村が地下で週2日間だけ販売している弁当屋にいそいそと通っている。  岡田としては嬉しかった。 「ここは部下でもあり、先輩でもある俺が1つ脱ぐべきかな?」  岡田は軽薄ではあるが、あまり社長の娘婿の特権は軽々しく使いたくないと思っている。もう既に、大学も卒業していなかった時に娘の相手、孫の父親として認めてくれ、会社の一員としても迎えてくれたのだ。  だが、西村には世話になっているし、西村のことは最愛の妻子の次に好きで、尊敬する義父の次に尊敬していた。 「名前もゆうくんと似てるしね」 自他ともに認める子煩悩な父親の発言をすると、岡田は自らの作った自妻弁当を広げた。

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