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第13話(R18)

 今まで、西村佑司も西村悠二も29年、それぞれの人生を生きてきて、沢山の人間に出会ってきた。その中には身体を重ねた人間がいなかった訳ではない。  だが、目の前にいる名前と境遇が似た男以上に理想的で、ある意味、自分の人生を預けても良いというような、そんな強い思いに駆られた人間は1人としていなかった。 「あ、湯加減、ちょうど良かった?」  悠二が言うと、西村は「ちょうど良かった」と返した。  ちなみに、ここは先程まで西村達がレモンサワーを飲んでいた居酒屋のある地区から2、3地区離れたラブホテルの一室。流石に、西村の職場の近くでは西村は勿論、職場に弁当屋として出入りしている悠二としても誰かに目撃された時によろしくなかった。 「これってナルシスト的な感じなのかな?」  悠二は既に身体を洗って、間接照明だけ点けた状態で、ベッドに入っていた。  その為、全身は布団に隠れて分からないが、服の上からでも悠二の身体は引き締まっていて、魅力的だと西村は思っていた。 「ナルシストって?」  西村はいつもつけている眼鏡をはずそうか、つけたままにしようか、考えながら悠二に問うと、悠二は西村をベッドの中へと引き込んだ。 「あ、ナルシストっていうか、自分の人生を自分の代わりに預けても良い。それって自分大好きすぎだろって感じただけ」  悠二は西村の眼鏡をはずすと、ベッドサイドにごとりと置いた。  おそらく、悠二の言わんとしているところは同じ名前で同じ日に生を受けた全く別の性質を持った2人が自分の性質が不一致している故に、同じ悩みや相手への憧れを抱いてということで身体を重ねようとしているっていうことにあるのだろう。  確かに、もし、西村佑司は西村悠二として、西村悠二は西村佑司として生まれて、新・西村悠二が普通に新・西村佑司と出会っていたとしたら、ここまでの気持ちになっていたかは分からない。  だが、1つだけ確かなことは今の西村佑司が強く、西村悠二という人間に惹かれているということだ。 「んん……んんっ……」  西村が悠二の唇を奪うと、悠二は一瞬、驚いたように眉を動かしたが、すぐに舌先を動かして、西村の頬や舌を愛撫する。唾液が混じり、生暖かい感覚と、量販品の石鹸の匂いの中にある悠二の僅かな匂いが西村の脳を揺さ振り、目尻から涙が零れる。 「何だか、つまらないことを聞いたみたい。俺も貴方にこんなにも惹かれていたのに」  悠二は西村の手を掴むと、その手を股間の方へと持っていく。西村の手には熱くて、硬くなりつつある陰茎や大きく膨れ上がった陰嚢が押し当てられて、西村佑司のことを愛してやまないと自己主張しているようだった。

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