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第12話

「それでも、そこそこ大きな飲食系の企業にも就職が決まって、勤めてたりもしてたんですよ? でも、3日でやめちゃってました」 「3日で?」 西村も最初の会社は何かが違うように感じてしまって、3年で退職してしまったので、悠二を強く言うことはできない。 が、聞いてしまっていた。 「新商品の開発する時に自分で作ったりしないのかって聞いたら、工場の機械が作ってくれるって言われちゃって。流石にへこんじゃいましたよね」 「成程。それはへこんでしまいますね」 「だから、西村さんみたいな人って凄いなって……」 「俺が?」 「ええ、同じ年で、しかも、中途採用で入ったのに、もうあんな大きな会社の部長補佐さんで。もしかしたら、西村さんが俺、西村悠二だった方が良かったのかも……なんて」  悠二は空になったジョッキをテーブルへ置くと、ゴーヤチャンプルを西村にも取り分けて渡す。既に、西村と悠二は同じ年であることは話していて、誕生日が何の因縁かは分からないが、共に、11月25日生まれだという。 「ありがとう、ございます。実は、俺もそう思っていて! 今は今で不満はないけど、もし、自分の人生を誰かに預けるとなったら貴方に預けたいなって!」  西村は自分も抱いていたようなことを抱いていた悠二にもはや親近感以上のものを感じていた。突拍子もないが、本当に西村佑司は西村悠二として、西村悠二は西村佑司として生まれるべきで、生きていくべきだったのではないか、そんなことを考えてしまう。  だが、それにも増して、家族にも理解してもらうどころか、話すことすらも叶わなかった、この感覚を共有できる無二の人間として、西村は悠二のことが堪らなく愛しくなってしまっていた。  そして、それは悠二も全く同じ思いだった。 「あの、もし、本当に良かったら……俺と……」

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