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第16話
「うーん」
西村佑司が西村悠二と出会って、もう2ヶ月近くが経とうとしている。まだまだ暑い日は続くものの、気温的なものは少しずつだが、下がってきているのを西村は感じていた。
「うーん」
西村は隣で唸っている岡田をとうとう無視しきれなくて、「どうした?」と聞いてみる。
すると、思いも寄らない岡田の口から飛び出してきた。
「いや、最近、西村さんが艶々して見えるんですよね」
「艶々?」
「あ、頭の方ではないですよ? 将来的にちょっと薄くなりそうですけど」
「ほっといてくれ……」
ほんの少しだけ西村自身も気になっていることを岡田は相変わらず、ずばりと聞いてきたのを西村はやっぱりそうかなと思うと、マジに受け取らないでくださいよ、と岡田が笑う。
「頭とかでなくて、肌とかかな? 前もエロリーマンって感じがあったけど、今はドエロリーマンって感じかな? まさに、エロ爆誕! エロ革命! 新世界エロ!! って感じです!!」
「……」
相変わらず、独特の言い回しに、西村は閉口するが、部屋はランチタイムになったということと、今日はオフィスの近くにある公園でちょっとした肉VS魚フェスをするということで普段は弁当派や社内で食べる派の社員も外へ行こうと賑やかだった。
「じゃあ、俺もそろそろ行きますね。久し振りに、藍ちゃんのお父さんと飯を食うことになっているので」
岡田は岡田でフェスではなく、今日は半休、明日は1日休みをとって、社長とランチとのことだった。
「俺はお父さんが連れて行ってくれるなら、その辺りのラーメン屋や牛丼屋でもって言ったんですけど、何ヶ月も前から予約でいっぱいになる店が奇跡的に木曜だけど取れたからって」
岡田はいつものように気楽に言っているが、ランチでも1人あたり万単位の金額のメニューが用意されている店らしい。あとは、昼ではあるが、ワインや日本酒などを何でも好きなものを開けられるらしく、岡田は上物のシャンパンを開けるようだ。
「社長にラーメンはないだろ」
「そうですよね、お父さんは蕎麦の方がイメージありますね。俺はちょっと苦手ですけど」
西村は「そういうことじゃないんだが……」と言いそうになると、忘れ物がないように確認して、岡田を送り出した。
「お疲れ様。今日は楽しんで、明日とか土日はゆっくり休んで」
「はーい。西村さんも俺がいないからって頑張りすぎちゃダメっすよ!」
釘を刺すように言い去っていく岡田を西村は見送ると、1人にオフィスに残る。
以前は水曜日か金曜日にしか悠二の弁当が売られていなかったし、西村自体が買いに行ける日ばかりとも限らなかった。
限らなかったが……
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