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第19話

お互い恋愛には発展しないって思ってたんだ。 この時は……。夢にも思わなかった。 大学の四年間はあっという間で、結局卒業するまで矢千とつるんだ。就職してからも連絡を取り合って、二年、三年、……四年。時は目まぐるしい速度で過ぎ去る。嬉しいことも悲しいことも絶えず経験した。周りのおめでた話を聞くことが増えて、歓喜したり落ち込んだり。そんな自分の傍に、気付けば必ず矢千がいた。彼はただ静かに、微笑みながら俺の話を聞いてくれた。 いつしか矢千のことを想いながら夜を過ごすようになった。長い付き合いだから勘違いをしているだけかもしれない。そう言い聞かせて忘れるようにしても、次の日の夜には彼のことを考えている。 有り得ない。そう笑い飛ばすこともできなくなっていた。 そうしてやっと、前に出した足が浮くような感覚の正体が分かった。 好きだ。 俺は、矢千のことが好きなんだ。 大切だって伝えなきゃ。いつ居なくなるか誰にも分からないって、彼が言っていたことだから。 ひとつの指輪を用意して、矢千に会いに行った。これは俺が稼いだ金で買ったものだとしっかり補足し、彼の唇を奪った。一瞬のこと……だけど、避けようと思えば避けられる。でも矢千は動かなかった。 「矢千! 俺と結婚してくれ」 「うん……あ、えっと……はい……」 矢千は顔を赤らめながら、たどたどしい口調で頷いた。眩いネオンが散らばる港湾でしたプロポーズ。情けない声も風に攫われる。矢千の紅潮した頬が印象的だった。 恋愛に重要性を感じない、なんて言ったのはどこの誰だか。そう弄り倒してやりたかったけど、今は彼に触れたくて仕方ない。自分の車に戻ってから、ひたすらに彼を抱き寄せた。 初めてがカーセックスなんて酷い恋人だ。それでも矢千は持て余していた熱を振り払うように服を脱いだ。自ら脚を広げ、俺の膝の上に腰を落とした。

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