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ロマンス・トライアングル・リクルーター!

見積書をいつもの倍以上のスピードで作成し、時間には少し早いが会議室にやってきた。 鶴来は総務部の仕事に捕まっているらしく、まだいない。 パイプ椅子や机はきっちりと準備されているので、用意周到で抜け目のない鶴来の対応力に頬が緩む。あの人は本当によくできる人だ。 とりあえず一番隅に腰がけると、すぐに脇に大きなファイルを抱えながら鶴来がやってきた。先に来ていた泉の姿を見かけると、小さく頭を下げる。 部下にも律儀な鶴来への好感度が上がり過ぎて天井をそろそろぶち抜きそうな泉だった。 「すまない。先に来ていたのか」 「全然大丈夫ですよ。あ、俺飲み物淹れますね。珈琲はシュガースティック二本と砂糖三つですよね?」 「ありがとう。よく覚えているな」 営業部だったころから味覚は変わっていないみたいだ。ちょっとホッとする。 新人だった泉を、鶴来は厳しくも一人前に育てあげてくれた。 その御恩は来世まで忘れることはないだろうし、たくさん迷惑をかけてきたが鶴来は決して泉を見捨てなかった。 一緒に頭を下げてくれ、遅くまで共に保険設計書の作成に付き合ってくれた偉大な先輩とまたこうして肩を並べて仕事ができるだなんて。 これから面接に来る就活生がどんな目に合うのかはわからないが、一分でも長く足掻いてくれればこの空間を延長できる。 「はい、面接者の履歴書だ。一度目を通しておけばいい。それと何か訊きたいことがあれば遠慮なく口をはさんでくれ」 「ありがとうございます……えっと、山崎……あ……?あ、いと……?今どきの名前ですね」 約束時間から五分経ったが、面接者の山崎は姿を現さなかった。 受付からの電話を今か今かと待ったが、一向に静かなままだ。 嘘だろ、早く着くのはともかく遅刻だなんてこの売り手市場でもありえない。 隣からあふれ出る威圧感に、泉も胃腸の痛みを感じそうになった。 これは荒れた面接になりそうだ。 世間知らずの就活生に大きな雷を降らせるであろう鶴来より先に真っ黒な液体を勢いよく飲む。喉が焼けるかと思ったし、気管に入り込んで盛大にむせた。

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