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ロマンス・トライアングル・リクルーター!

受付から電話が鳴ったのがそれからちょうど十分後。 反射的に受話器を取ると「面接予定の山崎様がお見えになられました」との声が届き、通してくださいとお願いをした。 恐る恐る電話を切った後、鶴来を見ると無表情をワックスで磨き上げたような顔をしている。この人の傍にいたらエアコンなんて目じゃないかもしれない。氷柱を思わせる目つきの鋭さに鶴来の純粋な怒りがひたひたと纏っている。 若干すでにひりついた場の空気に、泉はぬるくなった珈琲を飲んだ。 鶴来の珈琲はまだ減っていない。 「あ、来たみたいですね」 「泉、此処に呼んですまないが、この面接は執り行わない。入室したらすぐにお帰り頂く」 言葉の芯まで凍てついた発言だ。 この山崎とは話す価値もないといま面接官である鶴来が断定した瞬間だった。 「俺は大丈夫ですけど……逆切れしてきたりしませんかねえ?SNSで八つ当たりされるかも」 「遅刻するような人間に割く時間なんてない。ここはひとつ社会の厳しさを教えてやらないと、彼のためにもならないだろ」 まさか初回の面接業務でこんなビックイベントに出会えるとは。鶴来の叱咤が飛び交う会議室ならきっと営業部長も秒で退室するだろう。しかし泉は違う。 鶴来を尊敬してやまない彼にとってはレアな場面であり、彼が淡々と悪行を問い詰めるさまを見てスカッとするタイプの人間だった。つまり、なかなか性格が悪い。 四、五回のノックが強く響く。 ドアをぶち破る勢いでちょっとびっくりした。取り立てじゃないんだから静かに叩くべきだ。 「お入りください」 「あ、どうもーお疲れ様でーす」 わだかまりを抑えきった鶴来の一声に、これまた大きな音をたててドアが開かれた。 入室前は「失礼します」と声をかけ、控えめな態度と共に入室するのがマナーである。やっぱり遅刻する奴は肝が据わっている。 精々泣く寸前まで痛めつけられるといい、常識しらず恐れしらずの就活生!

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