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ロマンス・トライアングル・リクルーター!

「でしょー!このスーツ、お気に入りのブランドのやつでーわざわざ採寸までしてもらったんでフィーリングぴったり的な?ジャストサイズなんですよ!あ、シャツはウニクロで買いました。ウニクロまじ神!」 なんでだよ!そこはシャツも一層のことブランドものに統一しろよ!ウニクロも勿論ブランドものだけど! 「その可愛さと格好良さが融合しているファッションセンスは何処で磨かれたんですか?パリ?」 「鶴来さん?」 「いや?ファッション雑誌です。これぞ先ゆく就活生ファッショナブル特集やってたんで参考にしてきました!ネクタイはクールビズってことで」 面接者は得意げに鼻の下をこすりだした。 鶴来の高度過ぎる嫌味に気づいてないなんて見込みがないな、と泉は鼻を鳴らす。 こんな冗談言う人だったかどうか怪しいけど、無表情にいっさい揺らぎはないけれど、楽しそうにスーツについて語りだす面接者が何だか哀れだった。 今から面接をせずに追い返されるというのに、好感触だとでも勘違いしている風に見える。 とりあえずウニクロでもいいから白いシャツと黒いスーツを揃えて出直してきてほしい。別の会社なら君を取ってくれるところもあるだろう、多分。さようなら、君の事は悪い意味で永遠に忘れない。 「そうですか、ではお座りください」 「鶴来さん、鶴来さん!この人の面接やらないんじゃなかったでしたっけ」 「……わざわざ泉を呼んだのに、それもお前に申し訳ないと考えなおした。やはりこういった仕事は質ではなく量だ。とにかく場数を踏むことで自然と面接者の癖が分かるようになる。どんな相手にも敬意をもって真摯な対応が求められる仕事だから、とにかく経験を積むべき。決して彼があまりにも格好良すぎて心臓が痛いとかそういうのじゃない」 「なるほど!」 後半何を言っているのか聞き取れなかったが、鶴来は自分の事を案じてこんな無茶苦茶な面接に挑もうと言ってくれている。次々と放たれた正論は全部泉に気を使ってくれてのことだ。 この期待と気遣いを無下にするわけにはいかない。泉は頷き、あげかけた腰を落ち着かせた。

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