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ロマンス・トライアングル・リクルーター!
「はーい。失礼しまーす」
「私は鶴来と申します。この度、面接を担当させていただきますので名刺をお渡しさせ」
「あ、大丈夫。おれ名刺とかもらわないタイプなんで」
名刺を持って立ち上がりかけた鶴来はぴたりと動きを止める。
にべもなくバッサリと名刺を拒否した神経のずぶとさに一層の事感心してしまう。名刺いらないと面と向かって言えるそのメンタルは何処で養ってきたんだ?バイトリーダーでか?
中途半端な体制から座りなおした鶴来は
「限られた資源を無駄に扱わず、エコを重要視するその思想はとても素晴らしい。これからの社会をけん引するのは不必要なものを不必要だとはっきり言える若者だと私は考えています。それがきっと君だ」
「鶴来さん?」
「ではまず短く自己紹介をお願いできますか」
でた、第一関門「自己紹介」は必ず通る道でありながら、これが結構癖が強い。
まずは大学名と氏名をあげ、簡易に経歴をまとめ上げて、最後は宜しくお願いしますで締める。
簡単な流れだからこそ、素直に技術が求められる。それは話を短くまとめ上げることだ。
通常こういった緊張する場面なら誰しも話をうまく纏められず、くどくどと長く語ってしまう
自分をよく見せねばならない面接の場で、そういった事態に陥ってしまうとコミュニケーション能力の有無が明確に浮き彫りになる。
「あ、山崎 亜衣人文字 って言います。××大学の、22歳。部活はサッカーやってまーす。あー他に……あ、好きな女の子のタイプは女優のMEIちゃんですかねーあの子最近よくドラマとか雑誌とかに出てるんでもう追っかけが大変っていうかーま、そんなもんですかね、以上です自己紹介」
こういった内面もバレバレになるんだから、自己紹介は本当に恐ろしい。
山崎の自己紹介で分かったのは名前と大学名と部活と好みのタイプだけだ。合コンじゃないんだから、いらない部分があまりにも多すぎる。添削したらほとんどの台詞が消える。恐れしらずとはここまできたか。鶴来の「なめているのか」ボールペンが炸裂しても、泉は証人になるつもりでいた。
「そうですか、サッカーとMEIちゃん?というのがお好きなんですね。勉強しておきます。詳しく教えて頂いてありがとうございます。特にMEIちゃんという女性については重ねて研究を積んでおきます。ちなみに男性のタイプは?」
「鶴来さん?」
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