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ロマンス・トライアングル・リクルーター!

「失礼しました、人の好みに深い詮索は不躾でした。ありがとう泉、暴走しかけた俺をとめてくれて」 「いやそういうのじゃなくて……」 「さて、早速ですが志望動機をお聞かせ願えますか」 おおっと、さっそく本題を持ち出した。見事な切り出し口に泉は関心する。 自己紹介に続き重要質問の流れ技。一般的ながらもラッキー問題だとも評することができる。 なぜなら大体の企業では必ず聞かれるので、大半の就活生は事前に用意してきている場合が多い。というかしないとまずい。 志望動機というのはその会社に何故働きたいのかをたんまり詰め込む必要がある。 まずはその業界の志望理由、次にその会社ではなければならない必然とした説明、営業職で働きたいのならそのわけも、最後にはその会社で自分の培ってきた経験やスキルをどう活用できるのか。 伝えねばならぬことは沢山ある。 一度にすべてを詰め込む必要がないが、履歴書にも記入個所はあるので纏めることは容易なはずだ。棒読みにならなければ、最悪丸覚えでもいい。 履歴書と面接で志望動機に齟齬があっては元も子もないが、突っ込まれてもいいように臨機応変な回答も求められる。第二関門といったところだ。山崎はどうやってこの山場を乗り越えるのか、というかクリアできるとも思えない。 まあ平均水準並みのものしか言えないような顔しているもんな、山崎君は。 心の底で馬鹿にする泉は高みの見物を決め込んでいた。鶴来の鋭い切り替えしも楽しみだ。 レンコンみたいに中身すかすか甘っちょろい志望動機を完全論破されて絶望に打ちひしがれろ、山崎君! 「え?志望動機?大卒の前に普通就職するでしょーまずここの会社さん、転職サイトに求人張ってたじゃないですか、それからめっちゃ気になってー。あと就活もそろそろやらないとまずいなって思いまして。部活ばっかりしてたら完全に乗り遅れちゃったんですよねー。保険業界ってこれからも絶対に必要なものじゃないですか、だから俺もそこでめっきり鍛えて貰えたら立派な営業マンになれるのかなって思ったからです!御社の商品?入ってから覚えますよ」 「自分の現状を深く受け止め、大好きなサッカーも休止して集中的に物事に取り組む。しかも将来のキャリアアップもしっかりと念頭に置き、ビジョンも明確だ。保険業界のリサーチも隙が無く、好印象でしかない」 「いやスカスカじゃないですか!これからも必要な業界なんて腐るほどありますし!どう考えてもボールのけり過ぎで乗り遅れただけでしょこの人!そのまま就活時期も蹴り遅れてしまえばいいんですよ!」

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