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ロマンス・トライアングル・リクルーター!

「では自己PRをお願いします」 王道パターン第二弾をここに投入するのか。 気が張り詰める質問を連続でぶつけることにより、鶴来は彼の集中力を試しているのだなと泉は勘繰った。 自己PR。その名の通り、自分の強みを面接官にアピールする。 自己分析をきっちり行っていないとまず答えられないものだ。これも面接ではよく聞かれる部類にランクインする。というかほとんどの新卒面接では尋ねられる。 必死に就活マニュアルを夜通し熟読した泉には理解できた。これこそ就活生が最も己をアピールできる舞台だと。 プレゼンテーション資料は与えられず、ただ言葉だけを使って売り込む。私はこのような強みがあるので、御社の営業職や事務職で活躍できますと手短にかつ論理的に証明しなければならない。 ほとんどのものはバイトや留学、学校のイベント事の経験を主軸に語る。長年養ってきた能力を初対面の相手に伝えるのは気恥ずかしさがあるかもしれない。 だが、耐えねばならぬときがある。 自分自身をしっかりと見つめなおし、まだ気づけていない魅力を掘り起こして面接までたどり着いてきた勇者たちは、定番魔法「積極性」や「主体性」をフルに出力して、魔王面接官と日夜戦いを強いられているのだ。 「そうですねぇ、大学時代は沢山のものに積極的に取り組んできたんで活発な行動ができるのが自分のいいところだと思います!ぶつかって砕けてなんぼ!って感じ!サッカーも時にはファールを恐れず突っ走ることが求められてたんで!あ、あと笑顔には自信があります」 「例えばどんな?」 「こんな感じっす!一+一は、ニッ!」 笑顔についての追加質問ではないだろうに、山崎は無邪気に笑った。 口角がしっかりと上がっていて、頬には無駄な力が入っていない、自然な笑顔だ。フルパワースマイルでも厭らしさや下心の類は感じない。質問内容を吟味したうえでの適した場面であったならば、百点満点なのに。 「かわいい……」 「語彙力どこ行ったんですか鶴来さん!」 眼鏡を抑えて俯いてしまった鶴来に、思わずツッコミを入れてしまう泉だった。

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