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ロマンス・トライアングル・リクルーター!

「あなたは幼いころ、どのような子どもだと言われていましたか?」 王道質問が続いた後、イレギュラーなものが場に響き渡る。 志望動機、自己PRときてこれか。なかなか意地の悪い質問をする。そんなところも好きだ、鶴来さん! 泉はほくそ笑みそうになる頬を必死に抑えた。 対策仕様のない質問はこれ以外にもあるが、なかなか難易度の高いものを選んだらしい。家族や古くからの付き合いのある友人の視点がなければ答えるのも難しい。 大体の面接者はこの質問に不意を突かれ、取り繕ってきた仮面にヒビが入る。 当たり前だ。就活マニュアルには載っていないし、掲載されていても重要度は低い。 なぜなら必ず聞かれるものから対策を行うからだ。聞かれるかどうかわからないものまで回答を準備するほど就活生は暇ではない。必然的にその本人の素が求められてくる。 同時に、当本人のポテンシャルを把握するための質問でもある。幼いころからの習性はなかなか変わるものではない。幼少期の経験を踏まえて、自分の強みに絡めることができたなら煌めいた回答が生まれるだろう。 客観的に自分を評価したうえで自己PRに繋げるのはテクニカルさが重要で、臨機応変、当意即妙、柔軟な発言……この困難を乗り越えてこそ、内定への道は切り開かれる。 存在自体がイレギュラーな山崎君なら頓珍漢な回答をしてくるだろ、と失礼極まりないことを泉は考えた。 山崎は少し考えるそぶりを見せた後、満面の笑みを浮かべる。この笑顔すらなんだか憎たらしくなってきた。 「そうっすねーあ、俺は昔から元気だけはあるって言われてきました。あとめっちゃヤンチャらしくて、三輪車ってあったじゃないですか。補助輪抜けたのが嬉し過ぎたとき、どこまでも駆け抜けられる!っていう妙な自信わいちゃって、鬼のような急斜面の坂を親の目を盗んで漕いだんですよーもちろんスッ転んで三輪車もぶっ飛んでいっちゃったんですけどね!親には死ぬほど怒られて擦り傷だけですんだんですけど、下手こいたら俺も三輪車みたいに大破して今頃お陀仏阿弥陀仏って思ったら……うお、ちょっと背筋ゾッとしちゃったぜ……とにかくもう急斜面を自転車で下るのはやめようと思いました。あ、夏休みは宿題を貯めるタイプでした」 「失敗談を詳しく分析でき、なおかつ改善点も導き出している。ヤンチャという評価を色濃く強調するエピソードもスリルと少しのユーモア―を交えて説明できるだなんて営業にとことん向いていると思いますよ。私も夏休みは宿題を貯めるタイプだったので大変気が合いそうですね。今度お茶とかどうですか」 「鶴来さん無理して合わせなくていいんですよ!どう考えても貴方は七月中に全て終わらせるタイプでしょ!一番弟子の俺ならわかる!!」

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