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ロマンス・トライアングル・リクルーター!

「あなたの夢を教えてください」 大人になったら、むなしくも社会に出なければならない宿命にある。 そこで人生は終わりではない。そこからが長い人生の始まりだ。 小学生の頃の夢は宇宙飛行士だとか野球選手だとか、夢に夢見る答えでも許される。二十を超えた面接の場では、口が裂けても言えないけれど。 「御社に入社して新商品の開発に携わりたい」とか「お客様の人生をサポートして、笑顔になっていただく」といった入社する事前提のものがオーソドックスだろうか。 企業事業と関連性をもたせ、御社でなければできないことを淡々と喋る。 まあ基本的には就活生は内定をもらうことが目標なので、それが本当の夢でなくても構わないし、大体は本音ではない。それはこちらも理解している。 なぜなら泉の夢は油田を引き当てて鶴来を社長に押し上げることだし、その金で鶴来にスポーツカーとマンションを買うことである。日頃のお礼を金で物言わせて伝えたい典型的なオタク気質だ。 永遠に自分の上には鶴来がいてほしいので、いっそ新規事業を開発して、鶴来と二人三脚で会社を育てていくのもありなのかもしれない。 鶴来社長、鶴来取締役社長……とてもいい響きだ。ぞくぞくしてきた。帰り道ちょっと宝くじでも買って帰ろうかな。仕事中だというのに、幸せな妄想に浸る泉だった。 「俺はあれっすね。かわいい恋人とちゃあんと付き合って、健全なお付き合いを踏んでー無事ゴールインしたいですねぇ!暖かい家庭を育みたいっていうか」 「素敵な夢ですね。あなたならきっといいお嫁さんを見つけられると思います。むしろお嫁さんになるつもりは?」 「俺がお嫁さんっすか?うーん専業主夫になるっていうより、外で走り回って金を稼ぐ方が性分に合ってると思うんで」 「検討しておきます」 「まあ、お嫁さんじゃなくても俺男でも全然オーケーなんですけどね!」 「鶴来さん!書類握りつぶさないでください!なんでそんなに急に息が荒く!」

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