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ロマンス・トライアングル・リクルーター!

「学生時代に最も力を入れたことは?」 これも常套質問だ。学生時代に力を入れたこと、略してガクチカ。 これはエントリシートにもよく項目としてあがっている。そういえば履歴書は見たがエントリーシートは見てなかったな。 こっそりファイルからエントリーシートを拝借し、目を通してみる。全体的にクソ字が汚かったので、すぐ断念した。 ガクチカはその人がどのような学生時代を送ってきたのかを理解するのに最適なものだ。 これは実績や成果だけをつらつらと書き連ねるだけでは不十分だ。 勉強を毎日頑張ったとか、ゼミに毎週欠かさず通ったとか、そういった些細なものでもいい。経験から得たものをスキルに昇華して、自分がどれだけ頑張ったのか素直に伝えればそれが一番面接官の心をつかみやすい。結果には必ず根拠があり、根拠には理由がついてくる。 水たまりが蒸発して、再び雨雲になるように、物事には流れがある。いわば説明力だ。説明力とやる気とマナーが命の面接で、就活生は何度も理由を求められる定めにあった。ていうかマジで字が汚い。名前すら読解不能に近いぞこんなもん。 「ガクチカっすね!サッカーです!」 「サッカー部だと仰られてましたね……他には?」 「?最も力を入れたことなんでこれだけです」 「素晴らしいその通りだ。私の思慮が浅かったのをお許しください」 「そこはちゃんとサッカーの何に力を入れたのか教えてほしいんですけど!」 一瞬で会話を終えようとした鶴来にすかさず助け船を差し出す。 なぜか今日の鶴来は様子がおかしい。あの鬼面接官としての一面はどこへいってしまったのか。ぼーっと山崎を見つめているし、体調が悪いのかもしれない。 そこは一番の後輩である自分がしっかりフォローしなければ!泉は燃えていた。 これ以上お前のペースには乗せられないぞ、山崎 亜衣人!

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