3 / 74

急募、ビッチという誤解を解く方法 3

「ちがうんだ、ゆうだい」 「最初から全部録画されてるんだ。哉太が生徒会役員たちを誘って、止めに入った親衛隊たちも誘って淫行にふけっている姿を全部……俺は信じられなくて、全部見た」    昔のかわいらしい天使ボイスではなく男らしい美声が憎々し気に俺の裏切りを口にする。  雄大からすれば俺は言い訳をしようとしているようにしか見えないんだろう。  どんな言葉を口にしても証拠として最中の動画がある。    俺は思ったよりも痛みに弱かった。これが俺の敗因だ。    何回か犯された後それでも嫌がる俺に誰が言い出したのか爪をはがすという暴挙に出た。  ただでさえ乱暴なレイプに委縮していた心は限界だった。許してくださいとかごめんなさいとか俺は泣きわめいた。  クスリのせいか快楽以外の感覚も鋭く俺に伝えてきて爪をはがされた痛みに失禁したし心はもう負けていた。    すでにレイプされてあとはもう何されても変わらないだろと吹き込まれたのもある。  指定された言葉を口にしたり男を誘うような体勢をとったり言われたとおりの行動をした。  彼らの従順なオモチャになっていれば早く解放されるという胡散臭い言葉を丸飲みした。その言葉を信じるしかその時の俺には出来なかったのだ。それらの結果が雄大が見ている動画。編集されて俺の台詞の順番が違っていたりする。シーンの繋ぎが雑であっても内容自体が衝撃的なので雄大は気付いたりしないだろう。    俺自身の口から俺がビッチだという告白がある。雄大からすればいくら否定しても浮気を隠したいだけとしか思えないのだろう。俺の指先に巻かれた絆創膏。右手の中指から剥がしだすという恐ろしいことをしたアイツらは両手の小指を残して八枚剥がしてくれた。    ちゃんと指示に従って台詞を口にしても言わされている感があるとかそそられないとかいう理由で俺の爪をはがすのだ。そして反抗的な態度を少しでも取れば血まみれの爪を見せられて「足の方もやっとく?」なんてド外道なことを言われた。   「あれは脅されてっ」 「人のせいにするな。隠すなよッ」 「雄大、聞いてくれ」 「そんなに俺は心が狭いと思われてんの? 哉太が本音を口にすることも出来ないような奴だと思われてんの?」    いつにない雄大の焦った口調。   「俺は、俺はどんな哉太だって受け入れるっ。哉太が、哉太が好きだからッ!!」    泣きだす雄大はやっぱりかわいいし、好き好き言われて、ときめいたりする。  でも、俺はビッチでも淫乱でも何でもないから。  勘違いするな。  変な性癖持ってないから受け入れるな。もっと疑問に思え。  俺の隠された一面だと思っているなら何年一緒にいるんだっていうの。  どこでその趣味が開花できる瞬間があったんだよ。    俺と雄大は何処に行くにも何をするにも一緒だっただろ。  AVもゲイビも勉強道具程度にしか見てないのを知ってるだろ。  あんなエロ漫画台詞をどこで手に入れるっていうんだ。  俺があのセリフをエロ漫画からの引用だって知ったのだってアイツらが適当に開いたページの台詞を言わせようって言いながらエロ漫画を読んでいたからだ。    雄大はかわいい。騙されて今までの俺のことを信じられなくなってボロ泣きして、でも俺を好きだと言って抱きついてくる。ちょっと体格のいい雄大に圧し掛かれるとしんどいけど好き好き言い続ける雄大はかわいいから許す。といいうか雄大は何しても許す。    俺は雄大に甘々だという自覚がある。俺以外を疑いまくる雄大だからこそ俺の言葉を信じてしまう。雄大は悪くない。  どうせ雄大信者である生徒会役員たちにあんなビッチやめておけと動画を見せられて混乱して俺のところに来て泣きながら罵ったのだ。そして出た結論が俺から離れるものじゃないのが雄大の雄大なところ。    泣き続ける雄大の背中を撫でながら剥がされた爪のせいで指先が痛む。  そして感じるのは恐怖ではなく屈辱。  俺の雄大をこれだけ泣かせたんだからアイツら絶対許さない。    それにしてもこれからどうやって雄大の誤解を解けばいいんだろう。  俺は泣き疲れて眠った雄大を見ながら途方に暮れた。

ともだちにシェアしよう!