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まずは行動 8

   日曜日のレストラン、それは俺にとっての鬼門だ。    今は特に隣に雄大がいないからどんな悲惨なことになるか分からない。  徒党を組んだ人間たちは罪の意識が軽くなる。みんなやっているからこれぐらいは平気。何もしないでいるとノリが悪いと思われる。    エリート進学校にしては何も考えない猿のように右に倣え。  そうさせるだけの魅力が雄大にあったからか、それともあの頃から俺の輪姦に向かって流れを作っている誰かがいたんだろうか。  俺になら何をしてもいいという空気。  自分たちの行動が正しいと思い込めるだけの一体感。  俺を敵だと思うことで彼らはまとまっていた。    大体は「ここでそんなことやるなよ」「面倒になるからどっか行け」と俺に思っているのかもしれない。それもまた積極的ではないにしても俺に対する敵意だ。  雄大と一緒にいるからと考えずにいたけれど俺はそこまで人から敵意を抱かれるような人間だろうか。  容姿が平凡で雄大と並ぶと引き立て役にすらならないとしても人間性を否定されるいわれはない。    俺は自分に起きた被害が誰かの手によって仕組まれた陰謀だというのをほぼ確信している。俺たちは子供だけれど子供じゃない。拳銃を渡されたからってそれを的以外に撃って平気な人間は少ない。緊急事態じゃない普通の精神状態で俺たちは凶器を人に向けられないように良心、道徳、倫理、常識を育てて叩き込まれている。    ギラギラとした眼差し。  圧倒的な敵意。  自分が間違っていても構わない。  自分の中の感情が指針。  思い浮かべた俺への敵意の権化が冷たい目でこちらを見ている。   レストランから出てきた副会長と図らずとも対面することになった。  誰もが副会長みたいに俺を心の底から憎んでいるはずがない。  俺はそこまでのことを副会長を含めてした覚えがない。  雄大に関する感情は俺と切り離して考えるべきだろう。  たとえ雄大が生徒会役員を嫌っている理由が俺を嫌っているからだとしても。  考えればわかる。  雄大に取り入りたかったら俺に優しくしたりするという簡単すぎることをすればいい。考えて出した結論が気に入らなくても雄大の攻略方法なんて楽なものだ。   「出歩けたんですか」 「おかげさまであなたたちの生徒会長様に叩き起こされましてね」    元々、寝ちゃいないけど相手の出方をうかがってみる。  副会長は役員に選ばれるぐらいだから頭は悪くないが、雄大に関することには大馬鹿だと思う。  そうじゃなければ俺を集団で強姦しないだろう。  集団の連帯感なんて感じる人じゃない。  空気に乗るんじゃなくて自分で空気を作ったり流れを変えられるだけの力がある人だ。  だから、操られているんじゃないかと想像できる。  隠れ蓑に持ってこいの人だ。    副会長は雄大の親衛隊長と同じタイプの人種だ。  雄大のことを恋愛的に好きなわけじゃない。  ただ、煮詰まれきった感情は恋愛よりも厄介かもしれない。

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