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副会長との対面 1

 副会長はレストランの入り口から少し離れた位置でそのまま話をするらしい。  ちょっと考えなしだと思いながら俺から場所を移動しようという提案はとれない。  すでに敵愾心がメラメラしてる相手に油を注いだら引き出せる情報も引き出せなくなる。    下手(したて)に出る必要はないけれど気を付けるに越したことはない。  副会長は馬鹿ではないけれど俺に対しての行動は単細胞だと思う。  俺を排除する方法として集団を率いてのレイプなんてリスクばかりでリターンが少ない。それでも映像で脅すのではなく俺と雄大の間に亀裂を入れに来たのだけは、まあまあ正しかった。    脅されたら対処できるけれど雄大が俺から離れたり不信感を払拭できなかったらそこで終わり。俺の完全な敗北だ。  雄大は信用とか信頼とかそれ以前として俺から遠ざかる選択をしなかった。  その結果として今もこの先も苦しむかもしれない。  ある意味ではそれも自業自得だ。  俺と雄大は火薬庫の中で火種を作り続けていた。  大爆発してから気が付くなんて今更だけれど大火傷を負ってもまだ生きている。  なら、話はまだまだ終わらない。   「何を笑っているんです」    不快そうに目を細める副会長。  わんわんメモには「結構な眼鏡。メカ音痴のアナログ派。だから偏執狂なんです?」とあった。アナログな人がみんな偏っているみたいなニュアンスはどうなんだろう。  結構な眼鏡というのは視力が低くて眼鏡の度数が高いということだろう。  身長体重以外に視力や聴力なんていう数値もわんわんは揃えてくれていた。  それが何の役に立つかはともかく、わんわんの情報を信じると気になることが出てくる。    アナログ派でメカ音痴な人間が動画の編集なんて出来るんだろうか。    副会長がしないのなら誰がしたのか。  想像できるのは俺が想像する黒幕だ。  そして、黒幕が動画編集者なら話はとても早く済む。  元になった動画を含めて黒幕は動画の行き先を把握しているだろう。  馬鹿な奴らが無修正動画としてネットにバラまいたりする前に手を打てる。    最悪、寮のネット回線を落としてしまえばいいけれど自前のWi-Fiを持っている生徒だって多い。まずは適当に動かずに情報を手に入れないといけない。  俺が見ないふりをしていた部分。  俺への悪意の本当の姿。   「いえ、副会長って俺のこと好きですよね」    人が集まる前に短時間で必要な情報を手に入れるには雄大を餌にするのが一番だ。  副会長は雄大を好きすぎる。  焦りを見せずに笑って煽る。  まるで昨日のことなどなんでもなかった顔をしてみせる。  グローブのはまった両手を後ろに回して「雄大好きって嘘ですよね」と微笑む。    彼にとってこれは最大の侮辱だろう。  激昂したのが分かった。ちょろい。    雛軋(ひなぎし)と一緒にいた双子と違って副会長は武道はからっきし。  見た目は真面目なインテリメガネ。  細身なシルエットはわんわん情報によると百七十センチ。  疑惑とついていたので身体測定でズルをしたのかもしれない。  小さいがこれもいざとなればからかいの種になる。   「雄大のこと尊敬してるとか言いながら、本当は嫉妬していたんでしょう? 雄大の才能に」    あまりにも自分の考えと違うことを見透かしたみたいな言い方で告げると普通は呆れるかムカつく。  そして、副会長は分かりやすく怒りのボルテージを上げていってくれた。  怒りは判断を狂わせる。俺の知りたいことをぽろっと言っちゃってくれていいのよ。なんて余裕かましていたら「ちょっとこっちに来なさい」と二の腕を掴まれて庭園に引きずられた。    え、ピンチ?

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