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副会長との対面 4

 十分後、俺の蹴りのダメージからなんとか復帰した副会長は、叱られた犬のような顔をする。  馬鹿なやつではないと思っていたらまさかの大馬鹿野郎だった副会長。  どうして自分が蹴られたのか理解できないという顔。  見えないぐらいにその顔をすりつぶしてやろうかと湧き上がる怒りを抑えられない。  ふざけてる。    レイプ犯である自覚のない相手に俺の苛立ちゲージは当然上がる。  でも、ここで頭にきて必要なことを聞けなくなったら負けだ。バカだ。スマホを見るとゲームのチャットで「わんわんはわんわんなので犬食いしました。怒られました」とスプーンがない状態でのコーンフレークの食べ方なんて話してる。  最終的に箸で食べることになったらしい。  俺なら犬食いはしないが器を傾けて飲むように食べる。  いや、スプーンがないのにコーンフレークを食べようとは思わない。    心の中で世間話に相槌を打っていると気分が落ち着いてくる。  日常と非日常、常識と非常識。  そういうものを自分の中で確立していないと腐った流れに飲み込まれてしまう。   「申し訳ありませんの一言もないの、副会長さん?」    謝って許しはしないけど、だからといって謝らないでいいわけがない。  俺が何より腹が立っているのは謝ることすら思い浮かばないという態度。  悪いことをした人間の後ろめたさが少しもない。  反省させたいとか後悔させたいとか今更思っちゃいない。  俺がこれからするのは俺の受けた被害への対策だ。  八つ当たり気味なところが抜けないと感じるのは俺の精神的な負担が大きいからだ。    復讐は何も生まないとか憎しみの連鎖は断ち切らないといけないとか色々な考えがあるだろう。    でも、どうして俺が憎しみの連鎖を断ち切る側にならないといけない。  こういうのは復讐を止める側、連鎖の最後にあたる人間だけが損をしている。  いいや、損だと考えるような俺は憎しみの連鎖反応の真っ只中だ。  止めようがない。時間が傷を癒すなんて悠長なことを言える時期じゃない。    昨日の今日のことだ。    十数時間におよんだ地獄をまるっと忘れて生きていくことなんてできるわけがない。  キシさんのおかげで体調は凌辱の名残が抜けていつものコンディションに戻ってきているけれど精神状態まで通常かと言われると違う。    手足の一本や二本程度だったら俺は笑って忘れたかもしれない。だって、面倒だから。  他人に踏み込んで自分を理解させることは骨が折れる。  相手が俺に対してマイナスの感情をため込んでいたら尚更、近づきたくない。    雄大を好きなことイコール俺が嫌いだという構図はおかしいと全力で叫びたいけれど誰の心にも届かないから疲労感が溜まるだけ。  だから、手足の一本や二本なら泣き寝入りじゃないけれどわざわざ原因を探って犯人を捜してなんてことをしなかった。    俺のこの考えのせいで強姦まで状況が悪化したという自覚は今はある。  今だから言えることで以前は触れずにいるのが解決だと思っていた。  俺が近寄れば刺激することになる。  生徒会役員も親衛隊も俺を嫌う生徒たちはみんな世界の外側で見ないふり。

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