※チャット表現注意 　恋人からどうしようもない淫乱のビッチというレッテルを貼られて苦しんでいる俺に対して「ビッチは楽でいいですよね。体力を使うのはもっぱらこちら側です」と恩着せがましい副会長を蹴る。 　冷静にならないといけないのに腹が立って仕方がない。 　これすら誰かが作ったシナリオなら大したものだ。 　判断力を奪われそうだ。 　 「足の動きが見えないんですが……」 「俺の足の動きが見えないなら雄大はタイムスリップに感じるんじゃないですか」 　 　雄大は足が長いから十分に間合いを取ったと思っても急に吹き飛ばされる。 　開き直ったわけでもない加害者が加害者の顔をしていないのがこんなにムカつくとは思わなかった。 　タッチペンを手に取って思わず開きっぱなしのゲームのチャットに「罪悪感のない人間に反省をうながせずとも罪を意識させるにはどうすればいいでしょう」と書きこんだ。 　 　もっと砕けたり冗談みたいにしておくべきだと自分の書きこんだ文字を見て反省する。 　このチャットに発言を消すコマンドはない。 　ログをとる機能もないから流されるのを待つしかできない。 　 　 宮田：きゅうにすみません 宮田：なんか 宮田：混乱していて わんわん：みゃん太みゃん太ロムってた？ 宮田：はい 　 　 　答えてから荒らしの上に覗き見みたいでドン引きされたかもしれないと後悔する。 　ずっと見てたけれど発言しなかったというのは気味が悪いだろう。 　再度、謝ろうかと思った俺に俺がさっき脳内で返信していたお菓子の話題をわんわんが振ってくれた。 　ラッピングにお金を払うと犬や猫のものにしてくれるというとメチャクチャ食いついてきた。かわいいものが好きな女子なんだろうか。 　キシさんの外見に反応していたようだからメンクイ美少女か。 　いや、テンションの高い中学生かもしれない。 　そんな子が学園の情報を牛耳っているなんて現実感がなさ過ぎる。 　 　それがいい意味で気が抜けて足の裏で副会長を踏み続けた。 　俺も俺で罪悪感がないが副会長相手に罪悪感を持たなければならない理由が分からない。