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急募、冷静になる方法 2
※チャット表現注意
ミシン:お前、聞かれたことスルーしただろ>わんわん
わんわん:え!?
わんわん:わんわんは目先の欲に駆られました!!
わんわん:んー
わんわん:罪悪感のない人間には何をやっても無意味じゃないの?
わんわん:時間の無駄だね
くもりよ:わんわんドライだよな
くもりよ:違うか
くもりよ:お菓子>越えられない壁>人の悩み
くもりよ:なだけか
わんわん:わんわんはみゃん太を無視してないってば
わんわん:お菓子の話をしたかっただけです
宮田:変な話してこっちが悪かった
宮田:気にしてないから
ミシン:あーあ、これは泣かせた
わんわん:あわわ
わんわん:はにゃーんとか言えば許される?
くもりよ:なんでだよ
ミシン:なんでだよ
宮田:なんでだよ
わんわん:ほら、許されないときは何しても許されない
わんわん:だから逆に許す側だって何をしても許さなくていい
わんわん:反省させて一件落着にしたら気分は落ち着く? 救われる?
わんわん:罪の意識は他人から与えられるものじゃないんだよ
ミシン:つまりわんわんは猛烈に反省してるからもう責めるなって?
わんわん:さすが! 飼い主、わかってるっ
チャット内の空気はわんわんいじりになって俺の発言など誰も気にしていない。
それに心が楽になる。
わざと話が重くならないようにそらしてくれたのかもしれない。
俺が反省しろ、謝れと口にするのは簡単だが説明をするのは血を吐くような気持ちになる。
自分の傷口を直視してまで副会長に真実を伝える意味があるんだろうか。
俺が積極的にあの場にいなかったことを知ったとしても副会長は悪びれもせず「お互い様」と言うかもしれない。
雄大には分かってもらうための努力をしたが同じだけの熱量を副会長には向けられない。
わんわん:みゃん太が何か知りたいなら
わんわん:手軽なのならいいよ
それは以前のモノとは別だろう。
手軽というのは多分チャットで聞いても違和感のないような内容。
悩んだ末に俺は「人に踏まれて悦んでいるMの上手な扱い方」を聞いてみた。
面白いと思ってくれたのか「もっと踏んでおく」「顔面を殴りつける」「主人は誰か分からせる」とわんわん以外の他の人も食いついてきた。
わんわん:とりあえずは約束をあげるといいよ
宮田:こっちが?
わんわん:手なずけておくなら餌が必要でしょ
わんわん:飴を用意してから鞭をあげるのがシツケの基本なのです
宮田:なるほー
宮田:やってみる
副会長が望んでいるのは俺と恋人なんかじゃない。
たぶん友達になりたいんだ。
初等部の頃にその気持ちを裏切られて周りを使って軽いイジメが発生した。
そのことを副会長は悔やんでいる。
でも同時に俺がそのことを何とも思ってない様子だったから自分だけがこだわっていたのだと悲しくなっている。
「副会長、俺……あなたに強姦されたんです」
「合意だったじゃないですか!」
「だから、下僕からならいいですよ」
「はい!?」
「仕事ぶりによっては友人にしてあげます」
「なるほど、ゆくゆくは恋人になるわけですね。ローマは一日にして成らず!!」
殴りたいと思ったけれど美形で嫌味に見えてただのアホで変に前向きなせいで肩すかし。
俺の痛みや憤りぐるぐると腹の中で渦巻く不快感はまだ消えない。
でも、副会長のことを何も見ず、何も理解しなかった以前よりも視野は広がった。
必要な痛みとはもちろん思わないけれど。
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