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雛軋というヤンデレ 6
学園の中で孤立してしまっても雄大もキシさんも先輩たちもいた。
クラスメイトから嫌な目で見られたり舌打ちされたとしてもペアを組むときは雄大といればいい。チームを組むときは雄大と組みたがる人間が大勢寄ってくる。
大量の人間がいるのに俺はその中に所属できない。それは結構は恐怖だ。だからこそ見ないように、考えないようにしていた。別の学校に行ったところで雄大と一緒なら同じことになる。雄大が悪くなくても繰り返すだけで意味がない。
違うかもしれない。俺はある意味、転校することによって物事は好転すると思ってた。
俺には友達が出来て、雄大も周りと打ち解けて楽しい学園生活を送れるという夢いっぱいの希望。
もちろん俺の中の冷静な部分はそれを否定する。
全寮制の学園は似たような種類の人間を作り上げる箱庭だ。
キシさんも規模の違いやトップに立つ人間や今までの歴史で違いは出てきても基本的には変わらないと口にする。
それを信じているわけじゃない。
期待をして裏切られたら立ち直れない。
転校した先でも同じことが起きたりもっと酷いことになったら俺はきっと醜態をさらす。
だから、今の場所で悪意から目をそらし続ける。
見ないものはないものだから、俺は自分が嫌われているということだけを理解して、どう嫌われているとか、何故嫌われているのかなんて考えない。
考えても悲しいだけで言い返しても俺の言葉を聞こうと思ってるやつなんていない。
考えるだけ無駄なら向き合わなくたっていい。
嫌いたければ勝手に嫌っていればいい。
それを意識しなければ俺は傷つかない。
この悪意の渦の中で雄大だけは味方で、俺の手を離したりしないと信じてた。
だから、雛軋の狙い通り俺の一番弱いところ、俺の一番傷つく部分をめがけた攻撃だった。
肉体的につらかったし、精神的にだって立ち上がれない。
どれだけ苦しくてもきっと雄大が抱きしめて慰めてくれていれば俺の傷は浅く済んだ。
そうならなかった理由は、初めから俺を突き落とすための凶器として雄大が使われていたからだ。
集団レイプで心も体も疲弊させた後に特大の爆弾。
効果はてきめんだった。
でも、俺はくじけたままではいられない。
泣きたいのは俺の方なのに雄大が泣くから、まだ終われない。
くじけそうになる気持ちも心の痛みも弱音は全部飲み込む。
雄大は俺のことを疑って責めて怒って悪態をついたとしても、俺を好きだと泣き喚いて離れたくないと訴えるようなやつなんだ。雄大は俺を諦めない。
なら、俺からも雄大は諦めない。
外を出歩いている俺のことを雛軋は雄大が部屋に来たせいで居場所がなくなったと思っているのかもしれない。だから、双子を放置して俺を一人で追ってきた。それなら雛軋は雄大を知らなすぎる。俺への愛を理解していない。
雛軋は俺を知っているかもしれないが雄大のことは何もわかっていない。
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