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愛してるからこそ地獄行き 1 雄大視点
「急募、ドMという誤解を解く方法 4」のラスト、
「――俺のことが好きなら地獄に落ちてくれ」の詳細になります。
(哉太がキシさんのところに行ったり歩き回っている間に雄大が何をしていたのか)
「――俺のことが好きなら地獄に落ちてくれ」
その言葉の意味がその時は何一つ分からなかった。
けれど俺には頷く以外の選択はなかった。
俺が哉太を好きじゃない日が来るわけがない。
悲惨な裏切りを前にしてもまだ俺はこんなにも哉太を愛おしく思っている。
五月雨雄大と金宮哉太の絆は切れない。俺は固く信じていた。
哉太が自分のそばから離れることは考えられない。
そんなことはあってはいけない。
それだけが頭の中を占めていた。
何が間違いだったんだろう。
この学園に入学したことか。
この学園に馴染めないと気づいた時に見切りをつけなかったことか。
朝から副会長に呼び出されて眠りが浅かったこともあって役員室に顔を出したのか間違いだったのだろうか。
金曜に帰ってこなかった哉太に正直ちょっと俺は怒っていた。
でも、休みだからと哉太が外泊してそのままなのは稀にあることだった。
気合を入れたプレゼントを両親に贈りたいということだろうから先輩との仲の良さを嫉妬しても本気で会うのをやめろとは言わない。
たとえ先輩と泊りになっても特に問題は起きないと軽く見ていたところがある。
今まで問題が起こらなかったし、これからもないと高をくくっていた。
先輩は愉快犯ではあるけれど本当に俺と哉太が仲たがいするようなことはしない。あくまでも俺たちを茶化して遊ぶだけだ。良い先輩だ。哉太が頼ったり褒めたりするから認めたくないけれど容姿とかそういうことではなく自分よりも格上だと思う。何をするにしても余裕がある。哉太が俺から乗り換えるなんてことはありえないけれど休みだから先輩と遊んでいるというのは不思議じゃない。
それにしても金曜日の日帰り予定が泊まりになったなら俺に連絡を入れるべきだと怒っていたのは三時間、淋しくなって五時間、悲しくなったのは寝る前。
土曜日も哉太から連絡は一切ない。
自分から連絡するのは不貞腐れた気持ちで出来なかった。
こんなことなら哉太を一人で先輩のところに行かせるんじゃなかったと後悔しながら睡眠不足で日曜日の朝を迎えた。
浅い眠りは寝た気がしない。
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